研究課題/領域番号 |
15H02825
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池中 良徳 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40543509)
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研究分担者 |
石塚 真由美 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (50332474)
水川 葉月 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (60612661)
中山 翔太 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (90647629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Vector Control / DDT / 極新鮮肝Bank / iHep / ADME / 野生動物 / 感受性評価 |
研究実績の概要 |
Vector Controlのため、時に環境基準や野生動物への影響を度外視した散布もしばしば行われている。ヒト健康を尊守するうえで必要な処置であるが、この薬剤散布がどのような環境影響、野生動物への影響、しいてはヒトへの影響があるのか、評価する必要がある。一方、Vector controlには、DDTのみでなく、同時に様々なピレスロイド系農薬が使用されるが、この共散布が希少生態系にどのような影響を与えるのか、未だ報告はほとんど無い。更に、genome情報が乏しく、in vivo実験が困難な希少野生動物にこれら薬剤がどのような影響を与えるか、それを評価するための方法も未だ確立されていない。以上の背景の基、当該研究では「Vector controlで使用される薬剤のヒトおよび希少野生動物への毒性評価法を開発し、中・長期使用時の曝露riskを予測する」事を目的とする。 2015年度は、計画通り①極新鮮肝Bankの構築、②誘導性肝臓様細胞(iHep)を用いた感受性評価法の開発、③家禽(ニワトリ)および魚類(アフリカナマズ)を用いたin vivo投与試験を実施した。 ①極新鮮肝Bankの構築では、猛禽類を含む希少鳥類約60サンプル、ネコ科動物を含む哺乳類約30サンプルの採取を行った。②iHepの構築では、ハイエナの皮膚線維芽細胞からiHepの誘導を試みた結果、アルブミンやE-cadherinの発現が確認出来る等、誘導に成功し始めている。③の暴露実験では、投与実験は終了し、オミクスデータを用いたシステムバイオロジー解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極新鮮肝バンクの構築は、釧路市野生動物医学研究所および札幌市円山動物園の協力により、当初の目標以上に試料が集まっている。今後、採取した試料を用い、トキシコカイネティックス解析を行い、化学物質感受性評価を行う予定である。また、今年度は、初めて野生動物からのiHepの誘導に成功した点は、本研究計画において大きな進捗であると考えている。今後、ハイエナだけでは無く、他の野生動物の細胞も用い、誘導を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
① Vector Control地域におけるフィールドサーベイランス:協力機関の研究者らと共同で、環境試料(水・土壌・大気)、希少野生動物(無脊椎動物・魚類・両生類・鳥類・哺乳類)の採集を行う。得られた試料は化学分析を行い、DDT濃度を明らかにすると共に、高感度バイオマーカーを解析するためマイクロアレイを中心としたオミクス解析を実施する。 ② 希少野生動物の感受性評価:薬物動態解析に用いられる“ADME:Absorption, Distribution, Metabolism, Excretion”の各種factorを算出することがin vivo実験が困難な希少野生動物において化学物質感受性を評価するうえで重要と考え、それぞれの項目についてin vitroもしくはin silicoによる実験でデータを取得することを試みる。また、引き続きハイエナだけでなく、他の野生動物から採取した皮膚線維芽細胞を用い、iHepへの誘導を試みる。また、得られたiHepの機能を解析すると共に、各種薬物代謝酵素群のファーマコカイネティックス解析および代謝経路の解析を行う。
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