研究実績の概要 |
本研究は、化学物質によるヒストン修飾変化と、紫外線によるDNA損傷生成・修復との関わりを細胞レベルで明らかにし、それを実験動物で実証することにより、近年の皮膚がん増加の原因解明に貢献することを目的としている。本年度は、これまでの検討でヒストン修飾変化が認められた化学物質に加え、多環芳香族炭化水素等について検討を進めた。また、マウス皮膚にたばこ煙サンプルを塗布し、紫外線照射後のDNA損傷生成・修復率を測定した。 Benzo[a]pyrene (BaP)ならびにその酸化体を培養細胞に作用後、ウエスタンブロット法を用いて、ヒストンH3の修飾(リン酸化Ser10,28, アセチル化Lys9,14, ジメチル化Lys9,トリメチル化Lys4,27)、ヒストンH2AXのリン酸化を検討した。ヒストンH2AXのリン酸化Ser139は、BaPでは検出できなかったが、BaP酸化体では時間依存的に増加した。また、BaP単独では修飾パターンの変化はほとんど認められなかったが、各BaP酸化体作用後、明らかなヒストンH3K9, K14, globalなアセチル化、H3K4, K9, K27メチル化状態の変化が認められた。 マウス皮膚にたばこ煙を塗布し、UVBを3MED照射後、0, 24, 36時間に皮膚を採取し、cyclobutane pyrimidine dimers (CPDs)抗体で組織免疫染色を行った。CPDsの生成はたばこ煙の有無にかかわらず同じであったが、時間経過後のCPDsの残存数がたばこ煙作用した皮膚において多かったことから、たばこ煙作用による修復抑制が考えられた。以後、たばこ煙以外の化学物質についても同様に検討を進めていく予定である。また、この原因がヒストン修復変化と関連しているのかどうかをin vitroにおいて検討する予定である。
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