研究課題/領域番号 |
15H02829
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研究機関 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
三浦 伸彦 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 産業毒性・生体影響研究グループ, 統括研究員 (20229644)
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研究分担者 |
大谷 勝己 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 産業疫学研究グループ, 上席研究員 (50333373)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化チタン / ナノ粒子 / 精巣機能 |
研究実績の概要 |
酸化チタンナノ粒子(TiNP)の精巣機能障害に関する報告はこの数年で増えつつあるが、何れも亜急性または慢性影響による精巣影響を調べている。労働衛生曝露を考慮した場合には慢性的影響解析は必然であるが、我々は成熟精子への影響に主眼を置いている。そこで、先ずTiNP(10 mg/kg又は50 mg/kg)をC57BL/6Jマウスに単回静脈内投与し、精巣機能(精子数及び精子運動能を指標)の経時的変動(1, 3, 9日後)を調べた。その結果、投与9日後までに精子数に有意差は認められなかったものの、精子運動能は投与1日後には10 mg/kg投与群で50%程度、50 mg/kg投与群で70%程度減少した。投与9日後までに精子運動能は回復傾向にあったが、その程度は10 mg/kg投与群で低いことから、50 mg/kg群では凝集が生じている可能性がある。またこの時、成熟精子内のATP量を測定したが明確な増減は認められなかった。また単離成熟精子にTiNPを直接添加してMTT試薬を用いた生死判定を行ったが、非常にばらつきが大きく解析系の検討が必要と考えられた。一方、TiNPを経口投与して3日後の精子運動能は、静脈内投与と同様に有意に低下したことから、血中に取り込まれたTiNPが成熟精子に直接アタックしている可能性がより強く確認され、また日常的に食物から摂取するTiNPも精巣機能に影響する危険性が考えられた。しかし今年度に用いたTiNPは異なる結晶型の混合物P25(アナターゼ型:ルチル型=8:2)であり、食品等に用いられるルチル型による障害惹起か否かは現段階では不明である。なお、アナターゼ型及びルチル型それぞれ単体の投与を検討したが、凝集が強く、分散法(分散剤、凝集塊の排除など)を再検討し、次年度に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存の精子運動解析システム(CASA)への精子生存率測定ソフトの導入が、事前に業者が可能としていたにもかかわらず、CASAのOS更新無しでは導入できないことが判明した。研究遂行上、影響解析の際に当該ソフトを使用する必要があるため、OSを更新して当該ソフトを導入することとしたが、予算の関係でOS更新が平成28年度となった。そのため、精子への影響解析の遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、TiNPの精巣機能障害におけるLOAELまたはNOAELを算出する。また精巣障害誘発機構を解析するために、性ホルモン及びその上流のホルモンレベルの変動を調べる。変動が認められた場合、ホルモン産生に関与する因子群の遺伝子レベル・タンパクレベルの増減を調べTiNP曝露による影響を解析する。さらに、アナターゼ型及びルチル型それぞれが精巣機能に及ぼす影響を明確にするために、各結晶型の分散条件を再検討した上で、P25を対照として精巣障害の有無・程度を比較する。次世代影響解析にも着手し、in vitro fertilization (IVF)法及び、性行動解析を準備する。
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