研究課題
【研究目的】DNAのメチル化状態は、胎児・新生児などの高感受性時期の化学物質曝露など環境因子によって変化が生じ、成熟しても記憶されることが明らかとなりつつある。前世紀後半から増加傾向にあるとされる尿道下裂を臨床サンプルモデルとして取り上げ、独自開発したMSD-AFLP法の臨床サンプル解析への応用を実施した。【研究方法】尿道下裂患者及び埋没陰茎患者の包皮と同一患者から採血した血液からDNAを回収した。MSD-AFLP法により得られるメチル化CpGのゲノム塩基配列上の位置を予測あるいは確認するため、GFDBシステムを用い、包皮と血液でメチル化レベルに2倍以上の差が認められたメチル化CpGのゲノム塩基配列上の位置を検索した。また、両疾患の尿中重金属濃度をICP-MSで委託解析した。【結果】前年度よりも選択プラマーセットを拡張して全256種で解析した。検出できた総メチル化CpG(ピーク数)は47295あった。このうち、包皮のメチル化レベルの方が低いCpGは1860、血液のメチル化レベルの方が低いCpGは1843あり、計3703 CpGで組織間のメチル化の違いを検出できた。また血液のメチル化レベルの方が低いCpGの中に、Sialic acid binding Ig like lectin 12(SIGLEC12)遺伝子のような血中での発現が高い遺伝子上のCpGが含まれていることが判った。さらに、Protein kinase C zeta (PRKCZ)遺伝子のような多数のスプライシングバリアントを有する遺伝子上のものもあることが判り、組織間で微妙に異なるスプライシングバリアントの選択的スプライシングに関わるCpGのメチル化を検出したことが示唆された。また、分析された61元素すべてにおいて、症例間で曝露レベルに有意な差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
臨床サンプルにおいてもメチル化ピークチャートを取得できたことは大きな進捗であった。ヒトの臨床サンプルではSNP等のバリエーションが多く、MSD-AFLP法におけるピークの散逸が予想されたが十分に比較可能であることがわかった。
協力研究機関からの送付を待ち、検体数を増やして疾患と化学物質曝露ならびにエピゲノム変化に関する知見を集積する。
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