研究課題/領域番号 |
15H02838
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
新田見 匡 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (20377089)
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研究分担者 |
栗栖 太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30312979)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境技術 / 水質汚濁・途上汚染防止・浄化 / 反応・分離工学 / 糸状性細菌 / バイオリアクター |
研究実績の概要 |
糸状性細菌Kouleothrix aurantiaca近縁種の増殖制御により、下水処理活性汚泥の固液分離障害を解消することが本研究の目的である。本年度の研究実施計画は以下の通りであった。1)活性汚泥よりK. aurantiaca近縁種を分離培養し、K. aurantiaca近縁種のゲノム塩基配列を解読する。2)得られた配列情報よりK. aurantiaca近縁種の潜在的な代謝活性を推定し、その増殖因子を探索する。 1)K. aurantiaca近縁種の分離培養 下水処理施設より活性汚泥を採取し、K. aurantiaca近縁種の分離培養を行った。マイクロマニピュレーション(顕微鏡観察下において標的の微生物をガラスピペットで分取する)システムにより、K. aurantiaca近縁種を活性汚泥より分取し、コンタミネーションを極力減らした条件で培地に植種し、クリーンベンチで分離培養を行った。しかし目的のK. aurantiaca近縁種を分離培養することはできず、目的外の細菌が分離培養される結果となってしまった。従って本実験については次年度も継続して実施する。 2)K. aurantiaca近縁種のゲノム解読と増殖制御因子の探索 ゲノム解読においては、分離培養したK. aurantiaca近縁種よりゲノムDNAを抽出し、その全塩基配列を解読する予定であった。しかし上記の通り分離培養に成功しなかったため、本実験も次年度に実施するよう計画を変更した。一方増殖制御因子の探索では、下水処理施設の活性汚泥を採取し、汚泥中の低分子化合物をFT-MSで分析した。次年度は分析条件を最適化し、K. aurantiaca近縁種の増減に関与する物質について調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
K. aurantiaca近縁種の分離培養に失敗し、研究実施計画が次年度に延期となったため、残念ながらこの実験の進捗状況は遅れている。しかし代替の実験として、カルチャーコレクションよりK. aurantiaca(5株)を入手し、そのゲノムDNA配列を解読する準備を進めている。また次年度に実施予定であったFT-MSによる活性汚泥中の低分子化合物の分析を前倒しで実施することができた。以上複数の実験の進捗を総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
下水処理施設の活性汚泥に存在する物質を継時的かつ網羅的に分析し、K. aurantiaca近縁種の増減に作用する微生物細胞間情報伝達機構因子、および環境因子を探索する。K. aurantiaca近縁種の代謝活性や増殖とともに、活性汚泥微生物全体の増殖を調べ、K. aurantiaca近縁種に特異的に効果のある増殖制御因子を選定する。 1)K. aurantiaca近縁種の増殖制御因子の探索 下水処理施設の活性汚泥を継続的に採取し、汚泥中の有機酸、糖、タンパク、ほか低分子化合物を現有のFT-MSで網羅的に分析する。K. aurantiaca近縁種の増減とともに、他の微生物や物質の増減を調べ、K. aurantiaca近縁種の増減に関与する微生物細胞間情報伝達機構因子の情報を得る。また下水処理施設より、活性汚泥試料を採取したときの反応槽の溶存酸素(DO)濃度、pH、および温度など、運転管理情報を入手し、K. aurantiaca近縁種の増減に関与する環境因子を調べる。 2)K. aurantiaca近縁種の代謝活性の解析 カルチャーコレクションより入手したK. aurantiaca(5株)のゲノムDNA配列を解読する。同塩基配列より、K. aurantiaca近縁種が保有する遺伝子とその機能を調べ、代謝と制御機構を明らかにする。またK. aurantiacaおよび活性汚泥に放射性同位体で標識した基質を添加して数時間の回分培養を行い、1)で探索した因子がK. aurantiaca近縁種の基質摂取活性に与える影響を調べる。
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