平成29年度は、先行してホモ系統を確立した表皮細胞特異的プロモーター制御下でMerCを発現するシロイヌナズナについて,共焦点レーザー顕微鏡により発現解析を実施した。複数の形質転換系統を観察したところ,mTRQ2-MerC-SYP121融合タンパク質は,根の表皮細胞および根端の側部根冠に特異的に検出された。細胞内局在についてFM4-64によって細胞膜を染色し共局在を観察したところ,mTRQ2のシグナルは細胞全体で検出され,一部は細胞膜にも局在することがわかった。これらの植物を無機水銀で処理した時の水銀蓄積性を定量したところ,野生型株よりも地上部に水銀を蓄積しやすい傾向が認められ,導入遺伝子の効果が示唆された。 さらに,内皮細胞,中心柱,維管束鞘,葉肉細胞にそれぞれ特異的なプロモーターを用いたMerC発現系統について,T3世代にてホモ系統を確立した。共焦点レーザー顕微鏡にて観察したところ,内皮細胞特異的プロモーター系統について,根の内皮細胞特異的にmCherryのシグナルを検出した。葉肉細胞特異的プロモーター系統については,葉の表皮や孔辺細胞では発現していなかったのに対して,葉肉細胞でmT-Sapphireのシグナルを検出した。 また,水耕栽培を用いた重金属蓄積・耐性評価系を確立した。この水耕栽培系により,実際の土壌環境を想定した条件として,従来の固形培地を用いた栽培系よりも低濃度・長期間の金属処理の影響を評価できるようになった。
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