開発薬剤による磁選土壌の熱分離処理によって,Csを大幅に土壌から分離可能であることが分かった。まず磁選について,土壌への薬剤添加量は,0.2wt%~10wt%の範囲で良好な結果が得られた。土壌種によっても効率は異なるため,次の熱分離効果を測る試験では安定的な薬剤効果を期待して最も薬剤が高濃度となる10%で実験を進めた。得られた高濃度(=微粒子部分)/低濃度(=比較的大きな粒子)に磁選したモデル汚染土のうち,高濃度部分の汚染土を電気炉内で加熱した。電気炉には水洗トラップを装着しておき,Cs蒸発分を回収した。次に,加熱後の残渣を酸洗浄し,洗浄液中のCs濃度及び先に準備した回収Cs濃度を求めた。加えて,薬剤濃度,処理温度,還元雰囲気/大気下等の各種条件を検討し,Csの熱分離効果を求めた。薬剤未添加のケースでは,800℃では64%程度しか分離できなかったものの,10%薬剤の添加により約80%にまで改善した。その条件下,反応時間の延長はそれほど分離効率に影響を与えなかった。しかしながら,反応温度を900℃とすることで,99%以上の分離効率を達成した。次に,本技術の他分野への展開を模索した。PCB処理や重金属類の処理について検討を行った。PCB処理に関する研究では,東証一部上場企業との共同研究(本薬剤の組成に近い材料を利用)に発展し,現在,高度化を進めている。さらに,熱処理後の土壌物性を検討する中で,薬剤を添加し加熱処理することで土壌の初期物性が変化し,除染に有効な微粒子が生じたことを明らかにした。本件については,大手ゼネコンとの共同研究に進展し高度化を進めている。現在,特許申請準備中である。
|