研究課題/領域番号 |
15H02847
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
五十嵐 淑郎 茨城大学, 工学部, 教授 (70150258)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | レアメタル / イオン液体 / 貴金属 / 都市鉱山 / リサイクル / 刺激応答性ポリマー / 均一液液抽出法 / 環境配慮型分離システム |
研究実績の概要 |
本研究課題の達成目標は,学術的には希少金属に関する特殊分離メディアの詳細な解析とそれに基づく基礎研究を行なうこと,また,工学的には,分離メディアのリユースを伴う省エネルギー型の環境に配慮した新希少金属リサイクル技術を開発し,実際の都市鉱石からの有価金属のリサイクルを3カ年の計画で行なうことである。初年度である平成27年度は,分離メディアの1つであるイオン液体について,パーフルオロオクタン酸イオン(PFOA-)とテトラブチルアンモニウムイオン(TBA+)からなるイオン液体の基礎的物性データを集積した。機器分析として,走査型示差熱分析計(DSC)により,融点は,-2.3℃を観測した。また,2種類の質量分析(FAB-MS,TOF-MS)により,2PFOA-/TBA+(M.W.:1068.584)とPFOA-/2TBA+(M.W.:897.988)の異符号のトリプルイオンを観測した。さらに小角X線散乱法(SAXS)により,このトリプルイオンが,溶液内で1.9nmのクラスター構造をとっていることを明らかにした。これらの特殊分離メディアを示す知見は,新しいレアメタル分離機構解明の基盤をなすものである。工学的な応用として,イオン液体を構成するpH応答性フッ素系界面活性剤(ZonylFSA)による分離メディアでは,均一液液抽出(HoLLE)を用いるレアアース元素のリサイクルシステムを構築できた。62種類元素のスクリーニングの結果,Ceを除く15種類のレアアースを90%以上分離・回収することに成功した。また,このシステムでジエチルジチオカルバミン酸を配位子とすると,メッキ廃液からのロジウムの選択的な均一液液抽出ができることが分かった。今年度は,特に,機能性ポリマーと固相抽出担体としての綿球からなる分離メディアについてもレアメタル回収を検討し,特許出願1件の成果を出すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,分離メディア,特に,PFOA-/TBA+系イオン液体の物性に関する基礎的検討から,実試料中からのレアメタルの分離・回収に至る広範囲な領域を調査・検討した。その結果,本研究課題が,次世代型レアメタルの分離・回収法として,大きな可能性を秘めていることが分かった。この事は,当初の計画通り進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画で問題はないと考えられるが,イオン液体に関しては,カチオン分子・アニオン分子の組み合わせで分離メディアが構成されているため種類も多く,特異的な分離機構の出現が期待される。次年度は,刺激応答性(pH,温度など)ポリマーによる分離メディアについても,研究を着手し,新しいレアメタルリサイクルシステムを構築する。
|