研究課題/領域番号 |
15H02850
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
長縄 弘親 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主席 (00354837)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エマルション流 / 液液抽出 / レアメタル回収 / 溶媒抽出装置 / エマルションフロー現象 |
研究実績の概要 |
エマルションフロー法の特色を活かした新たな仕組み・容器構造の開発に関する5つの課題について研究を行った。まず、エマルションの一時的な急成長を防ぐことを目的として、上方の相分離部に2枚の邪魔板を設置した装置を試作し、エマルションフロー実験に用いた。その結果、エマルションが急成長しても、ある程度は消滅させることができることが分かった。一方で、エマルションの消滅は完全ではなかったため、急成長したエマルションをオーバーフローさせながら相分離部に導くことで消滅させる仕組みについても検討を始めた。 水相の比重が大きい場合については、水相の相分離部を混合部の側方に配置することで、水相のショートパスを生じさせることなく、目的金属を高い抽出率で回収できることが分かった。比重が大きい水相として、白金等の貴金属を高濃度で含む水溶液を調製し、バッチ実験(前検討として行う試験管での実験)と試作装置でのエマルションフロー実験で用いることで、上記の良好な結果を得た。また、抽出速度が小さい場合についても、水相の相分離部を混合部の側方に配置することで、化学平衡に至るまでに水相と有機相を接触させられることが分かった。抽出速度が小さい系として、パラジウム等のソフトな金属イオンに対してS-ドナー系のソフト抽出剤であるジヘキシルスルフィドを用いてバッチ実験とエマルションフロー実験を行い、上記の良好な結果を得た。 固形成分の連続的な回収・除去については、トラップを設置する場所について検討した。その結果、トラップを水相の相分離部の端に装置本体から出っ張るように設置することで、連続して効率的に固形成分を回収・除去できることが分かった。 また、ポンプ送液だけで起こる連続的なエマルション流の発生・消滅という現象(エマルションフロー現象)の解明について、高速度カメラによる観測を行い、同現象に係る新たなメカニズムを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に設定した5つの研究課題は、すべてについて順調に進展している。加えて、当該年度の最後の課題として設定したエマルションフロー現象の解明について、同現象に係る新たなメカニズムを見出した意義は大きい。具体的には、装置上方のノズルヘッドから導入された水相のミリメートルサイズの液滴が、その下方に位置する液液界面に衝突することで起こるミルククラウン現象に似たメカニズムで、サイズ均質性の高いマイクロメートルサイズの液滴(水滴)が瞬時に大量に発生することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究課題は、すべて順調に進展したため、基本的には、当初の研究計画に基づいて研究を進める。一方、エマルションの一時的な急成長を防ぐための取り組みは、当初目的は達成したものの、現時点では満足できる結果は得られていないことから、平成28年度は、当該研究課題を重点化する。具体的には、邪魔板を用いる方法の他にも、エマルション流の通過断面積を部分的に狭める方法を検討する。 エマルションフロー現象の解明は、当初の計画以上に進展しているが、更に、流体シミュレーションを行うためのソフトウェアについても検討し、高速度カメラによる観測と合わせて用いることで、現象解明を加速する。また、ある程度の成果が蓄積した段階においては、学会発表、論文投稿も積極的に行う。
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