研究課題
背景と目的: 大規模災害時の火災で発生するPAHsの種類や生成メカニズム、濃度および環境残留性に関する知見は少ない。本研究は、津波火災を想定した安定同位体のPAHs標準品の燃焼実験を行い、PAHsの新規生成に関する解析を試みた。実験:5 gのNaphthalene (Naph) と3 gのNaphthalene-d8 (d-Naph) およびPerylene (Pery) をそれぞれ燃焼し、大気サンプラーで大気試料を採取・分析した。得られた試料は有機溶媒で抽出し、GPCとシリカゲルカラムで前処理した後、GC-MSおよびGCxGC- HRTOFMSで定性定量した。結果と考察: Naph (2環) の燃焼大気中から3環のAcenaphthylene (Acl) や5環のBaP が、Pery (5環) の燃焼大気からは4環のFluoranthene (Flth) や6環のBenzo[ghi]perylene (BghiP) 等がそれぞれ検出された。また、d-Naphを燃焼したところ、燃焼大気中にPhenanthrene-d10や1-Methylnaphthalene-d10の存在が明らかになった。以上の結果から、PAHsはその燃焼過程で低分子化、高分子化、メチル化した同族体がそれぞれ生成することが示された。本実験では、災害時の重油燃焼が深刻な大気・水環境汚染を招く可能性が示された。今後は、高濃度のPAHsを含む燃油火災の汚染リスクを詳細に評価し、この種の被害を最小限にするための国・自治体等による減災対策の構築が急務といえよう。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemosphere
巻: 224 ページ: 39-47
https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2019.02.078