研究実績の概要 |
平成27年度は、解析モデルの構築と、構築した解析モデルの検証(バリデーション)を完了した。そこで平成28年度は、構築した解析モデルを実サンプルに適用してその有効性を検証した。 実サンプルとして、ここ数年間の国内使用量が多い農薬である土壌燻蒸剤DDに着目し、その構成成分である(E)-1,3-dichloropropene(DCP)を塩素処理して生成する変異原性物質の探索を実施した。塩素処理する際、塩素添加率を変化させたサンプルを4~5サンプル調製した。調製の際、DDを含まないコントロールサンプル、DDを含むが塩素処理を実施しないブランクサンプルを調製した。調製したサンプルの変異原性を、Ames変異原性試験により評価した。 従来の研究成果から、DCPを塩素処理したサンプルをエレクロトスプレーイオン化法(ESI)を用いてイオン化しても、LC/MSで測定して得られるピーク数が少ないことが明らかになっている。このため、生成する変異原性物質がカルボニル化合物であると仮定して、塩素処理サンプルを2,4-dinitrophenylhydrazine(DNPH)で誘導体化して測定した。誘導体化したサンプルの物質を、高分解能・高質量精度・高感度LC/MSを用いたプリカーサーイオン分析により探索した。得られた探索結果のカラム保持時間の誤差を補正し、サンプルユニークなイオンを抽出した。その後、平成27年度に構築した解析モデルを用いて解析を実施した。 その結果、DD塩素処理サンプル中の主要な変異原性物質と考えられるピークを特定することに成功した。最終年度は、得られた物質の同定を試みる。
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