研究課題/領域番号 |
15H02856
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
吉岡 博貴 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (40332944)
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研究分担者 |
松岡 真如 高知大学, 自然科学系, 准教授 (50399325)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 地球観測 / 人工衛星 / 計算工学 / 自然現象観測・予測 |
研究実績の概要 |
地球観測データの統融合化では,センサー間相対誤差の低減が課題の1つとされている.これに対し,実施初年度となるH27年度は,波長依存性,解像度依存性,角度依存性の解析と低減を目的に設定し研究を進めた. 波長依存性については,異なる波長帯で観測された反射率の間の関係式が,データプロダクト間の相対誤差低減において重要な意味を持つ.そこで初年度は反射率間の関係式の高精度化を試みた.具体的には,2種類の反射率間関係式を対象に,多重反射効果の考慮,および解析的モデルの高度化により打切り誤差の影響を抑えることに成功した.さらに数値実験を実施し,反射率間関係式の誤差が,実在するセンサーの信号対雑音比と同程度まで低減できることを確認した. 空間解像度については,様々なパンシャープン手法(空間解像度向上手法)を比較評価するためのフレームワークを開発し、ハイパースペクトルデータを用いて複数の空間解像度向上手法の評価を行なった.これにより,異なる解像度のデータの融合結果を定量的に評価することが可能となった. 角度依存性を解析するため,静止軌道衛星の「ひまわり8号」の時系列データとカーネル型の二方向性反射モデルを用いて太陽―地球―衛星の位置関係の違いによる反射率の変動をモデル化した.さらに,ひまわり8号日本域データの幾何精度を向上させる手法を開発した.その結果,縦方向に0.3から0.4画素,横方向に0.9から1.1画素程度であった誤差を縦方向に0.07画素,横方向に0.15画素程度にまで低減できることを示した.これにより,ひまわり8号の時系列データを用いた方向性反射の解析の高精度化を達成した. 標準的なデータプロダクトの1つ植生指数のセンサー間関係は,反射率間関係式の係数で表現可能である.これらの成果により相対誤差発生メカニズムの理解は着実に深めることができている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い,波長依存性等の相対誤差発生メカニズムについて研究を進めることができた.実施した研究の成果は原著論文5本に繋がっている.これら原著論文は,反射率や植生指数のセンサー間における相対的誤差の3要因に関連するもの(波長依存性の関連論文3本,解像度依存性の関連論文1本,角度依存性の関連論文1本)であり,共同研究体制の構築と共に研究は順調に進展している.また,放射伝達モデルや実データを用いた時間を要する数値実験についても進めることができている.特に,実データに関する数値実験では,ひまわり8号についての誤差低減についても具体的な進展があり,1年目の期間内に原著論文として発表できている.これらのことから研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は波長依存性などの個別要因について研究を進めた.今後はそれら要因の複合的な影響についても研究目的に追加する.特に,波長依存性と解像度依存性との相互作用,および,角度依存性と解像度依存性の相互作用の2項目について研究を進める計画である. 推進方策としては最適化等の数値的手法により反射率間関係式のさらなる高精度化を進めること,および,植生指数間関係式に関する放射伝達モデルを用いた数値実験などを予定している.本研究課題1年目に導出を進めた反射率間関係式および植生指数のセンサー間関係式に着目し,波長依存性を反映しているそれら関係式の係数が,空間解像度の変化に対してどの程度の影響を受けるのか,数値実験等により解明していく. 研究を遂行する上で数値モデルにもとづく植生変数の推定が精度向上における問題点になる可能性がある.それに対しては,研究項目の一部をモデル逆算による変数推定の研究に変更する等の対策をとる. さらに,推進方策の1つとして,実画像を用いた数値実験を予定している.高解像度でほぼ直下視となる中解像度衛星センサーの観測結果と,低解像度で多方向観測を行う衛星センサーの結果を比較することで,地物判読精度の評価などを進めていく.
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