研究課題/領域番号 |
15H02859
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
楊 英男 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50561007)
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研究分担者 |
根岸 信彰 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 上級主任研究員 (90270694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 物質循環システム / 省エネルギー / 太陽光利用 / 光触媒 |
研究実績の概要 |
微細藻類のバイオエネルギー生産の効率化に欠かせない藻類の回収、オイル抽出、残渣処理などバイオ燃料生産の全プロセスの実現に太陽光を直接利用できる光触媒技術を用いることで、微細藻類からの油分抽出の効率化及び残渣のバイオガス変換に着目した太陽光と光触媒を組み合わせた省エネルギー型微細藻類のオイル回収及び残渣からのバイオガス生産システムの構築に向け、研究を進めてきた。 平成27年度は、太陽光に対する高い光触媒活性を有する材料の作製と特性解析、高活性光触媒材料膜作製条件の最適化及び太陽光を利用した光触媒固定型処理槽の作製関連の研究開発を行ってきた。結果として太陽光に対する高い光活性と安定性を持つ、吸収可能な波長範囲300~800nmの新規光触媒材料の開発に成功した。作製した材料の物理化学特性及び表面特徴の分析を行い、高い光活性を持つ原因を解明した。また、長期使用に対する耐久性に優れた光触媒材料であることを証明した。実用化に向け、光触媒膜の活性と耐久性を保つ固定化条件を検討し、ガラス表面に固定化する場合は400℃、2時間3層が最適であることが明らかになった。さらに、開発した光触媒膜リアクターを作製し、細胞壁の固い微細藻類クロレラをモデル藻類として用いて行った予備実験の結果、24時間ですべての藻類膜は破壊され、藻類に含まれるオイル回収が可能との結果が得られた。 この一年間の研究成果は国際誌6報登載、国内誌1報登載、国際学会16回、国内学会10回、うち招待講演5回の発表実績を得られた。関連成果はJST筑波大学新技術説明会には大学の新技術として紹介された。その後、約50社の企業から大学の産学連携を通して技術相談の申し入れがあり、既に、東証一部上場の6社との技術相談を行った。本業績は、当該分野のみならず、関連する環境、エネルギー、健康といった分野で、その発展に大きく寄与している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H27年は、太陽光に対する光触媒活性に優れる光触媒材料の開発を重点に置き、二酸化チタンと銀と銀イオンを原料として、水熱処理・焼結法を用い、Ag修飾した新規光触媒材料を開発し、その材料作製の最適条件を確立した。結果として太陽光に対する高い光活性と安定性を持つ、吸収可能な波長範囲300~800nmの新規光触媒材料の開発に成功した。作製した材料の物理化学特性及び表面特徴の分析を行い、高い光活性を持つ原因を解明した。また、長期使用に対する耐久性に優れた光触媒材料であることを証明した。 また、光触媒膜の活性と耐久性を保つ固定化条件の検討は、触媒の量、溶媒の濃度、コーティング時間、焼結温度と時間、コーティング層など固定化条件の最適化を図り、ガラス表面に固定化する場合は400℃、2時間3層が最適であることが明らかになった。耐久性を評価するためには、長時間の光照射を行い、その結果生じる表面化学組成変化をSEM、FTIR、XRD測定で評価し、表面損傷についてはAFM観察などで評価し、結果をまとめた。関連内容を科学誌Journal of Materials Chemistry A (インパクトファクター7.443) に掲載した。 さらに、開発した光触媒膜リアクターを作製し、細胞壁の固い微細藻類クロレラをモデル藻類として用いて行った予備実験の結果、24時間ですべての藻類膜は破壊され、藻類に含まれるオイル回収が可能との結果が得られた。 この一年間の研究成果は国際誌6報登載、国内誌1報登載、国際学会16回、国内学会10回、うち招待講演5回の発表実績を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、①光触媒固定型処理槽を用いた対象藻類膜の処理効果の最適化の検討。前年度までに開発した自動コントロールシステムを組み込んだ光触媒固定床型処理槽を用いて、処理効果の最適化を図る。微細藻類を使用し、太陽光照射の強度、照度、藻類の通過速度、光触媒による細胞壁の破壊程度との関係を確認する。また、海水や藻類表面現存する多糖類など有機物の影響に関する各要素を検討し、最終的に最もバランスの取れた処理の条件を決定する。②光触媒処理した藻類のオイル抽出効率の比較。細胞壁の破壊処理した藻類と未処理の株のオイル抽出率の比較など、最適な要素技術の選定を目的とした分離・抽出技術の課題を抽出する。通常の溶媒処理による細胞壁の破壊、また亜臨界水処理と爆砕処理によるオイルの抽出率は50%前後である。上記の最適条件における光触媒による藻類の細胞壁の破壊処理方法を用いて、低コスト・省エネ技術の実証を行い、オイル抽出率はさらに30~40%向上が期待できる。光触媒処理した藻類のオイル抽出効率の比較結果のもとに、分離・抽出技術の選定、操作条件の最適化を通して、コスト、GHG 排出量、エネルギー収支の評価を行う。③光触媒固定型処理槽を用いた藻類残渣の可溶化効果の検討。一般に、微細藻類残渣中に含まれる繊維分などの難分解性物質の分解反応は律速となっている。藻類残渣中に含まれる難分解性物質は太陽光を利用した光触媒固定型処理槽を用いて可溶化を促進することでプロセス全体の高速化が図れ、結果的に装置の省エネルギー、コンパクト化に寄与できるものと期待できる。本年度は光触媒分解装置の処理最適化を目的に、前述の光触媒固定床型処理槽を用い、オイルを抽出した微細藻類残渣を原料とする処理実験を実施し、原料濃度、光照射時間、光強度などを変数として可溶化率の最適化を行う。
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