研究課題
微細藻類のバイオエネルギー生産の効率化に欠かせない藻類の回収、オイル抽出、残渣処理などバイオ燃料生産の全プロセスの実現に太陽光を直接利用できる光触媒技術を用いることで、微細藻類からの油分抽出の効率化及び残渣のバイオガス変換に着目した太陽光と光触媒を組み合わせた省エネルギー型微細藻類のオイル回収及び残渣からのバイオガス生産システムの構築に向け、研究を進めてきた。平成28年度は、1.光触媒固定型処理槽を用いた藻類膜の処理効果の最適化の検討を行った。微細藻類のモデルとしてクロレラを使用し、人工太陽光照射循環システムにおける藻類の濃度、通過速度、時間による光触媒の細胞壁への破壊程度との関係を確認した。その結果、藻類培養環境20倍濃縮した藻類でも24時間の処理で細胞壁が破壊され、光触媒処理で細胞壁を破壊した藻類と未処理藻類のオイル抽出率を比較した結果、約2倍高くなることが確認された。通常の溶媒処理による細胞壁の破壊、また亜臨界水処理と爆砕処理によるオイルの抽出率は50%前後である。上記の最適条件における光触媒による藻類の細胞壁の破壊処理方法を用いて、低コスト・省エネ技術の実証を行い、オイル抽出率はさらに40%向上が実現できた。2.光触媒固定型処理槽を用いて、オイルを抽出した藻類残渣のメタン発酵を行い、光触媒処理でない条件に比べ、5倍のバイオガス転換効果が得られた。藻類残渣中に含まれる難分解性物質は太陽光を利用した光触媒固定型処理槽を用いて可溶化を促進することでプロセス全体の高速化が図れ、結果的に装置の省エネルギー、コンパクト化に寄与できるものと期待できた。この一年間の研究成果は国際誌7報登載、特許1報、国際学会18回、国内学会15回、うち招待講演2回の発表実績を得られた。多数の企業から大学の産学連携を通して技術相談を行い、1社とはMATを締結した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成28年度は、1.光触媒固定型処理槽を用いた対象藻類膜の処理効果の最適化の検討。前年度までに開発した自動コントロールシステムを組み込んだ光触媒固定床型処理槽を用いて、処理効果の最適化を検討した。まずは微細藻類のモデルとして、クロレラを使用し、人工太陽光照射循環システムにおける藻類の濃度、通過速度、時間による光触媒の細胞壁への破壊程度との関係を確認した。その結果、通常藻類培養環境20倍濃縮した藻類でも24時間の処理で細胞壁が破壊され、未処理の株のオイル抽出率の比較の結果、約2倍の抽出率が高くなることが確認された。また、海水や藻類表面現存する多糖類など有機物の影響に関する各要素を検討し、適量の塩分濃度でも光触媒処理効果に大きな影響はなかったことが分かった。2.通常の溶媒処理による細胞壁の破壊、また亜臨界水処理と爆砕処理によるオイルの抽出率は50%前後である。上記の最適条件における光触媒による藻類の細胞壁の破壊処理方法を用いて、低コスト・省エネ技術の実証を行い、オイル抽出率はさらに40%向上が実現できた。光触媒処理した藻類のオイル抽出効率の比較結果のもとに、分離・抽出技術の選定、操作条件の最適化を通して、コスト、エネルギー収支の評価を行い、通常法よりのエネルギー収支が大幅プラスになった。3.光触媒固定型処理槽を用いて、オイルを抽出した藻類残渣のメタン発酵を行い、光触媒処理でない条件に比べ、5倍のバイオガス転換効果が得られた。一般に、微細藻類残渣中に含まれる繊維分などの難分解性物質の分解反応は律速となっている。藻類残渣中に含まれる難分解性物質は太陽光を利用した光触媒固定型処理槽を用いて可溶化を促進することでプロセス全体の高速化が図れ、結果的に装置の省エネルギー、コンパクト化に寄与できるものと期待できた。
平成29年度は1.可溶化した藻類残渣の水素・メタン発酵ではガス転換速度の向上が重要な課題である。従って、システム全体の目標を達成するために、下水汚泥由来のコンポストから集積したミクロフローラを用いて、90℃で1時間の前処理を行うことによって水素生成菌を活性化させ、それから可溶化した藻類残渣を原料とする連続発酵を行い、pH 及び水理学滞留時間(HRT)を変数として可溶化率と水素生成収率の最適化を行う。また、メタン発酵の高効率化を達成するため、本研究代表者がメタン発酵効率化に携わる経験を生かし、高効率固定化技術と間歇光照射を取り入れた光メタン発酵技術を用いたベンチスケールメタン発酵槽の設計・試作・運転を行い、可溶化した藻類残渣の水素・メタン発酵の効率化及びバイオエンジニアリングを行うことによって、高効率固定化技術を達成するためのトータルシステム開発を行う。2.トータルシステムの構築とエネルギー収支の総合評価を図る。前年度までに開発した要素技術を統合させ、最適化を図る。最適化は、従来法の3-5倍のオイル抽出率と15倍のバイオガス生産効率の向上技術の確立を目標とし、各要素技術のエネルギー効率、環境負荷、経済的・社会的効果についての検討を行う。さらに微細藻類からオイルの生産、高効率バイオガス生産の全体システムに対しての総合評価は最も重要であるので、ここで運転条件やパラメータなどのデータの収集、システム全体のエネルギー収支などを解析し、実証化のための設計データを得る。そして、バイオエネルギー生産システム全体のシミュレーションによる生産性試算等を行い、本研究開発システムのエネルギー効率、経済、環境への影響などの総合評価を行う。環境への評価についてはLCA手法を導入して行う。すなわち、微細藻類から高効率生物燃料の回収及び残渣のバイオガス生産法を確立し、現状技術のパラダイムシフト化を図る。
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