研究実績の概要 |
本研究は、未開拓なウキクサ亜科植物PGPBの基礎と技術を開発するとともに、「PGPB技術」×「デンプン生産ウキクサ栽培」によるエネルギー生産性とCO2排出削減性を徹底的に高めたデンプンバイオマス生産システムを創出することを目的としている。 平成28年度は、PGPBによるウキクサ亜科植物バイオマス生産促進を種々の条件で定量評価した。その結果、Spirodela polyrhiza, Lemna minor, Lemna gibba, Landoltia punctataの4種類のウキクサのバイオマス生産を2倍以上促進するPGPBを20株以上特定することができた。これらのPGPBによるウキクサバイオマス生産促進効果は、栄養塩濃度や温度に依存せず、異なる培養条件のウキクサに対して確認された。さらに、下水二次処理水や養豚排水などの実排水を用いたウキクサ栽培においてもPGPBは、ウキクサバイオマス生産を2倍以上促進することが確認された。これらの結果から、PGPBはウキクサバイオマス生産の促進に有効であり、その適用範囲は広いことが示唆された。 また、平成28年度は、PGPBによるウキクサ亜科植物バイオマス生産促進のメカニズムをメタボロミクス解析、トランスクリプトーム解析や特定遺伝子の発現解析などを駆使して解明することを試みた。その結果、PGPBは(1)水中からの窒素取り込み、(2)窒素固定・アミノ酸合成、(3)光合成の光化学系、(4)クロロフィル合成、(5)カルビンサイクルの複数の代謝・反応を活性化することが分かった。このような種々のプロセスが活性化され、最終的にウキクサのバイオマス生産が促進することが強く示唆された。
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