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2015 年度 実績報告書

関与物質総量のボトムアップ解析による資源デカップリング戦略

研究課題

研究課題/領域番号 15H02862
研究機関京都大学

研究代表者

山末 英嗣  京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90324673)

研究分担者 藤森 崇  京都大学, 地球環境学堂, 助教 (20583248)
松八重 一代  東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50374997)
谷川 寛樹  名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90304188)
中島 謙一  国立研究開発法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (90400457)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード関与物質総量 / リン / ニッケル / 肥料 / 食糧 / リサイクル / データベース
研究実績の概要

研究代表者が提案した二つの関与物質総量の枠組み従い,関与物質総量のデータベースを整備した.主に日本における生産活動を対象とした.推算は概ね,ニッケルを中心とした金属・合金,リン系化合物,硫黄系化合物,肥料,食糧等,あるいはそれらの生産活動に必要な投入物質など,総計で200程度の素材・製品について推算を進めることができた.この成果をベースに,一部の製品については内訳を国別に分解した解析も行い,新たな資源依存性評価手法の構築も進めた.
さらに,従来の関与物質総量の推算フレームワークの拡張も行った.すなわち従来の関与物質総量では,鉱山の閉山処理,あるいは製品製造・リサイクル時に排出される毒性物質の無害化処理等については加味されてこなかったが,本稿ではそれを評価に加えるべくフレームワークの拡張を行った.同時に,それらを希釈によってどのように無害化するかについて実験的な側面からも検討を行った.
また,影響デカップリングと資源デカップリングの優先度分析を行うための手法の構築を進めた.具体的にはCO2-TMRダイアグラムを作成し,これまでに推算したデータを用いながら評価の枠組みを構築した.
さらにこれまでに推算を行ってきたデータについては,websiteによるデータ公開(ただしすでに論文等で公表済みのものに限る)を開始し始めた.従来,関与物資総量のデータは元素レベルや一部の製品レベルで公開されてきたが,本研究では推算方法の詳細まで含め効果を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

関与物質総量の推算は当初の予想以上に進めることができた.その理由として「食品類」については日本での製造を中心とした60-80品目,またそれに関する「肥料」(20品目),金属・合金種・それらの製造に関わる中間物質(フェロニッケル等)(約100種類),「酸,アルカリ」で10~20種,その他30~50種等,当初の予定より多くの製品種について推算を進める事ができた..なお,ニッケルについては,文献整理だけでなく,GISデータ等も援用した分析を行い,HPLC法だけでなく乾式法,そしてリサイクルについても考慮することができ,従来にないデータの充実性を持たせることができた.リンについては中国におけるフィールド調査も行い,乾式リン酸,湿式リン酸,黄リン等,世界で初めてのデータを推算することに成功した.肥料については,カリウム系,窒素系,リン系についてのデータを整備し,それを下に日本における作物類を中心とした食材の関与物質総量の推算に成功した.肥料の関与物質総量の推算においては,塩酸,硝酸,硫酸,アンモニア,苛性ソーダ等の酸アルカリについても推算に成功した.
さらに来年度に向け,従来の関与物質総量の推算フレームワークの拡張も行った.例えばリサイクル残渣中の鉛やインジウムの濃度については実験的な手法により定量評価し,天然リン鉱石に含まれる資源起源放射性元素については文献調査を下にデータベースを構築した.さらにはそれらを希釈によってどのように無害化するかについて検討を行った.
また,影響デカップリングと資源デカップリングの優先度分析を行うための手法の構築に成功し,これまでに推算したデータを用いて分析を進めてきた.
以上より,H27年度は当初の予定とほぼ同等かそれ以上に進捗していると判断した.

今後の研究の推進方策

日本国内製造製品についてはこれまでに推算してこなかったプラスチックに焦点を当てる.また,その他の工業中間製品にも焦点を当てる.推算地域もアメリカ,中国,ベトナム,インド,EU などに拡張する.
途上国のリサイクル村における型家電リサイクルの実態とワーカーの鉛中毒の影響をケーススタディとしてフィールド調査し,その影響を拡張したフレームワークに基づき評価する.さらに近年使用量が急増しているインジウムが人間健康に与える影響を評価する.
年間関与物質総量についてはさらに時間的・地域的な要素を追加し,国家や都市の発展に応じて人間社会がどのように資源端に依存してきたのかを解析する.資源端の地域別依存度については,自国のみを見ていた前年の成果を基に,他国への依存を総合的に評価する.例えばハーフィンダール・ハーシュマン指数といった多様性評価指標を援用する.
国レベルのモデルをベースとしながら,地域モデルを扱うことができるようにモデルを精緻化し4d-GIS システムに組み込む.地域モデルは国モデルの単なる縮小版とはせず,周辺地域の影響を受けるような相互作用モデルを構築する.システムには得られた結果を直接リンクできるようにし,リサイクル率や製品寿命といったパラメータ,スケールあるいはシナリオの変化をソフトウェア内部で動的に行えるようにし,視覚的な解析を行えるようにする.
また初年度に構築を開始したwebsiteにおけるデータベース公開を本格化する.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ハノイ工科大学(ベトナム)

    • 国名
      ベトナム
    • 外国機関名
      ハノイ工科大学
  • [雑誌論文] Innovations in Steelmaking Technology and Hidden Phosphorus Flows2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuyo Matsubae, Eiji Yamasue, Tadahiro Inazumi, Elizabeth Webeck, Takahiro Miki, and Tetsuya Nagasaka
    • 雑誌名

      Science of the Total Environment

      巻: 542 ページ: 1162-1168

    • DOI

      10.1016/j.scitotenv.2015.09.107

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Weight of Land Use for Phosphorus Fertilizer Production in Japan in Terms of Total Material Requirement2015

    • 著者名/発表者名
      Eiji YAMASUE, Kazuyo MATSUBAE and Keiichi N. ISHIHARA
    • 雑誌名

      Global Environmental Research

      巻: 19 ページ: 97-104

    • 査読あり
  • [学会発表] 黄リンの関与物質総量2016

    • 著者名/発表者名
      山末英嗣,松八重一代,大竹久夫
    • 学会等名
      資源素材学会平成28年度春季大会講演
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] ニッケルの国際サプライチェーンに内在する多面的リスク要因の抽出と整理2016

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔, 松八重一代, 中島謙一, 長坂徹也
    • 学会等名
      資源素材学会平成28年度春季大会講演
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] TMRとCO2の観点から見たデカップリングの優先度分析2016

    • 著者名/発表者名
      山末英嗣,松八重一代,中島謙一,村上進亮,醍醐市朗,石原慶一
    • 学会等名
      日本LCA学会第11回講演大会
    • 発表場所
      東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)
    • 年月日
      2016-03-02 – 2016-03-04
  • [学会発表] ニッケルの国際サプライチェーンの背後にあるリスク要因抽出2016

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔, 松八重一代, 中島謙一, 長坂徹也
    • 学会等名
      日本LCA学会第11回講演大会
    • 発表場所
      東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)
    • 年月日
      2016-03-02 – 2016-03-04
  • [学会発表] マテリアル・フローから見た国際資源循環の課題とは?(ベトナムをケーススタディとして)2016

    • 著者名/発表者名
      山末英嗣
    • 学会等名
      未踏科学技術協会エコマテリアルフォーラム
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-01-18 – 2016-01-18
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Potential of steelmaking slag as phosphorus resource in terms of total material requirement2015

    • 著者名/発表者名
      Eiji Yamasue, Kazuyo Matsubae, Hideyuki Okumura and Keiichi N Ishihara
    • 学会等名
      Asia Steel International Conference 2015
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2015-10-05 – 2015-10-08
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Natural Occurring Radio Active Materials from Phosphate Ore in Japan Phosphogypsum as a Sink and Evaluation of its Substitution2015

    • 著者名/発表者名
      Eiji Yamasue, Takeo Fujimoto, Hideyuki Okumura and Keiichi N Ishihara
    • 学会等名
      the 3rd International Conference on Final Sinks
    • 発表場所
      台北(台湾)
    • 年月日
      2015-08-23 – 2015-08-26
    • 国際学会
  • [学会発表] Priority Analysis between Resource and Impact Decoupling in terms of Total Material Requirement and CO2 emissions2015

    • 著者名/発表者名
      Eiji Yamasue, Kenichi Nakajima, Shinsuke Murakami, Kazuyo Matsubae and Keiichi N Ishihara
    • 学会等名
      World Resources Forum Asia Pacific 2015
    • 発表場所
      シドニー(オーストラリア)
    • 年月日
      2015-06-01 – 2015-06-03
    • 国際学会
  • [学会発表] Critical minerals and enrgy impacts and limitations of moving to unconventional resources2015

    • 著者名/発表者名
      Benjamin Mclellan, Eiji Yamasue, and Tetsuo Tezuka
    • 学会等名
      World Resources Forum Asia Pacific
    • 発表場所
      シドニー(オーストラリア)
    • 年月日
      2015-06-01 – 2015-06-03
    • 国際学会
  • [備考] 関与物質総量データベース

    • URL

      http://www.social-system.energy.kyoto-u.ac.jp/new/en_US/member/yamasue/tmr/

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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