研究課題/領域番号 |
15H02869
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
紀伊 雅敦 香川大学, 工学部, 准教授 (20426266)
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研究分担者 |
土井 健司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10217599)
石塚 正秀 香川大学, 工学部, 准教授 (50324992)
野々村 敦子 香川大学, 工学部, 准教授 (60363181)
細田 尚美 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (70452290)
三好 博昭 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (80399055)
中村 一樹 香川大学, 工学部, 助教 (80723791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 気候変動 / 都市化 / 水ストレス / 幸福度指標 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、世界約3600都市を対象に2100年までのベースラインシナリオを構築した。IPCCのRepresentative Concentration Pathway(RCP)シナリオと整合的な気候、社会経済シナリオの下、都市人口変化と市街地拡大を推計した。その結果、世界全体の都市面積は2100年には2000年比の3~6倍と推計されたが、その傾向は地域により大きく異なることが示された。また。シナリオ毎の違いから特に経済成長が都市拡大に大きく影響することを示すとともに、持続発展シナリオの推計結果はストーリーラインと整合せず、政策介入等がシナリオ実現に必要なことを示唆した。その成果を土木学会地球環境シンポジウムで発表した。 また、水資源の需給が逼迫する状況の分析例として、データを比較的収集しやすいイスラエルを例として取り上げ、水ストレスの算定を試みた。その結果、都市毎に水ストレス度を算出することにより、国単位で算出した結果と比べて、水ストレス度が約1.4~5.6倍に高まる結果が得られ、都市流域内人口密度の有用性が示された。また、都市化と気候変動影響評価における幸福度指標の適用性に関して、文献レビューを行い、QLIの定量化における課題を整理した。その結果、幸福度指標はQOL評価型とSWB評価型の指標に分けられ、これらの利点を統合した評価型の指標も開発されている一方で、都市化と気候変動に関する項目指標の包括的な評価、都市化に関するニーズの違いを把握するための重要度の差別化、気候変動の影響スケールの単位となる流域圏レベルの分析について、課題が残ることが分かった。 これらの内容は、土木計画学研究会春大会で発表し、その内容を査読付き論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はベースシナリオを作成するために各部門のモデル作成を行っている。上述の様に研究は概ね順調に進展しており、学会発表、学術論文の投稿も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、都市活動と環境資源制約の相互作用をモデル化するために各部門のモデル統合を行う。まず、持続発展シナリオのストーリーラインと整合的な都市化シナリオを検討するために、交通技術、建設技術が都市人口密度にもたらす影響を考慮した分析を行う。また、大都市部での複数都心の形成、郊外部のスプロール、および人口減少下での都市のスポンジ化などを表現するために土地利用モデルを拡張する。これらは、本研究を基課題とする国際共同研究加速研究費の成果をフィードバックすることで対応する。 また、気候変動に伴う都市レベルでの水ストレス評価は本プロジェクトの主要な評価軸の一つだが、前年度イスラエルを対象として水ストレス評価手法を提案している。ただし、これはあくまでも現状の評価であり、将来の気候変動と都市化の進展がもたらす影響評価が必要である。そのための分析手法の拡張を行うとともに、将来気候変動のモデル推計結果を反映するための枠組みを作成する。また上述の都市分析の空間レベルとの整合を図る。 以上の都市シナリオモデル、水ストレス評価モデルでは、都市居住者の生活への影響に関する指標が得られる。それらを幸福度指標に照らして、将来の気候変動が都市生活の質に与える影響を評価する方法論を検討すると共に、気候変動緩和策に伴う都市生活コストの上昇が生活の質に及ぼす影響についても分析するための方法を検討する。これらにより、気候変動政策と都市政策を統合的に分析するための枠組みを検討する。 次年度以降はこの分析枠組みを活用し、気候変動と都市の統合政策の検討を試みる。
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