研究課題/領域番号 |
15H02871
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
高橋 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20336720)
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研究分担者 |
松下 幸司 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90199787)
栗山 浩一 京都大学, 農学研究科, 教授 (50261334)
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
宮崎 淳 創価大学, 法学部, 教授 (30267489)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 森林環境税 / 里山管理 / 木の駅 / 森林認証 |
研究実績の概要 |
社会が支える森林管理の三つの手法に対応した3チームがそれぞれの手法について集中して研究を遂行した。また、経済実験および法学的検討も行った。 ①森林の環境サービス機能の契約販売については、類似した仕組みとして府県の森林環境税、森林・山村多面的交付金、緑の募金を対象として、公共財供給メカニズムについての分析を行った。その結果、森林の環境機能への需要を反映した意思決定が行われた可能性ならびに森林ボランティア団体数に代表される社会関係資本の影響が確認できた。②地元の住民グループによる森林の多面的機能を取り込んだ森林管理については、滋賀県東近江市の先進的事例について、その面的展開について調査を行った。東近江市にぎわい里山づくり条例制定の背景と概要ならびに自治会単位での拡大、そして里山保全活動が継続するポイントなどが明らかになった。また、滋賀県北部で共有林の名義を集約した事例について確認できた。全国の共有林の動向を把握するため、世界農林業センサスの個票データの集計も実施した。③木材流通による地域森林管理支援については、2008年に始まり、全国40か所に展開している「木の駅」プロジェクトについて分析を行った。あわせて、岡山県真庭市の木材資源安定供給協議会についても調査を行った。それぞれの事例で地域のミクロな木材供給が影響していることが分かった。 経済実験により、森林認証材の需給についてシミュレートした。森林認証の需給は初期条件に依存し、認証材のシェアが少ない現状では普及困難であることが明らかになった。したがって、政策的支援の必要性が浮き彫りとなった。法学的分析としては、ワシントン大学で試行されているECOSELのシステムと法的枠組みを対象として研究を行った。現段階では、まだ法的枠組みが未整備であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三つの手法に対応した3チームおよび経済実験ならびに法学的分析について予定していた調査、分析が実施され、また取りまとめの研究会が2017年3月に開催された。
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今後の研究の推進方策 |
社会が支える森林管理の三つの手法に対応した3チームがそれぞれの手法について集中して研究を遂行する。①森林の環境サービス機能の契約販売については、北米でのECOSELや我が国の森林環境税の事例研究・統計分析を行い、それらの結果に基づいて、日本での実現可能性を検討する。②地元の住民グループによる森林の多面的機能を取り込んだ森林管理については、国内および海外の事例の集積から、類型化およびモデルの抽出を行う。③地域材・森林認証材流通による地域森林管理支援については、価値連鎖(バリューチェーン)の構成比を比較し、森林管理への還元の程度について評価する。 2017年度は、3チームの知見の統合を開始する。すなわち、様々な比較指標(対象となる森林の特徴、対象となる多面的機能発現の度合い、価値連鎖(バリューチェーン)のなかでの価値配分、等)を基準として、3種類の森林管理手法を比較する。そして、それぞれの手法の特質、適用分野について検討を行う。さらに、複数の手法の組み合わせ、新たな手法の着想も試みる。経済実験の結果から、社会実装に向けた課題抽出を行う。法学的課題についても整理を行い、現実的な制度化への課題を明らかにしていく。
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