研究課題
今年度は、福島原発事故後の避難に関する現地調査、アメリカの放射能汚染問題との比較、日本の地域放射能汚染問題における経験蓄積の取りまとめの3点を中心に行った。2017年春にいくつかの自治体で避難指示が解除されたが、そこで地域再建が進んでいるとは言えない。帰還する人たちは事故以前と同じような生活を希求しているが、現実には除染廃棄物仮置き場、ソーラーパネル、建設工事、荒れた農地、解体された家屋などによって景観も変わってしまっている。地域の将来像を話し合い、計画立案するための道筋が模索されている。その際、帰還住民数が少ない地域では、「通い復興」など域外居住者との連携維持も注目されている。本研究では、それらについて、帰還か他地域移住かの択一や建設工事中心の補助政策など、「復興」の背後に残る課題について調査・考察した。原子力・放射能汚染にかかわる問題が長期的なものであることは外国の事例からも明らかである。長崎原爆のプルトニウムが製造されたアメリカ・ハンフォードでは、1940~60年代に蓄積された汚染について1980年代末から浄化作業が開始されたが、30年後の今日ようやく主段階に入ろうとするところである。健康被害やリスクへの不安、今後の産業に関する懸念、放射性廃棄物をめぐる課題、問題の風化なども継続している。関連して、原子力産業の立地点・関係者における経済的メリットとリスクとの関係、「風下の人たち」のリスクと被害、アメリカ中西部における東西海岸部との地域格差、無関心層の存在などに関しても、日本との共通点が見られる。これらを含めて、原子力・放射能をめぐっては世界各地で多様な問題の歴史がある。それらはしばしば機密にされ、個別に取り扱われることが多かったが、実は、時代・地理・施設の種類などの違いを超えた共通性も多い。本研究でもその一端を示してきた。発表論文等の研究業績は別記の通りである。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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