衣生活の満足が心身の健康に大きく関係することや,おしゃれをしたいと考えているシニアは増加している.しかし現実には,服のサイズは合っているのに似合わない,似たデザインが多く選択肢がないという不満を持っているシニアは極めて多い.一方で,デザイナーが新しいアイデアを生み出すプロセスにスタイル画の作成がある.一般的に創造性を念頭においたスタイル画では,現実の体形をふまえながらも,理想や美しさを表現するためのデフォルマシオン(意匠的変形)を施した体形が着衣の基体として描かれる.しかしシニア女性向けのデザインでは,その体形の理解が進まないままスタイル画が描かれている現状がある.そこで現実のシニアの体形特徴とそれに応じたデフォルマシオンを明らかにできれば,スタイル画やCADのための基準人体像として活用できる. この目的のため本研究では,ファッションデザインの視点からシニアの体形を捉えるため,40歳から70歳の女性を被計測者として,3次元計測装置およびマルチン計測法によって集団計測した体形を,デザイナーに観察させて体形分類を行い,その中からシニア体形の特徴を顕著に有する代表体形を抽出した.そして観察者とは異なるデザイナーが,代表体形に対して体形を美しく見せるスタイル画に骨格モデルを適用し,デフォルマシオンの特徴を定量的に分析した.このデータを基にモーフィングによる画像変換技術を応用し,シニア女性の体形の多様性に対応させた,体形を美しく見せる理想をデフォルマシオン(意匠的変形)から検討し,体形タイプ別のデザイン用の基準体形像を作成した.そしてこの基準像の妥当性は専門家の評価により確認した.
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