研究課題/領域番号 |
15H02879
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
安藤 昌也 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70513729)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 利他的行動 / ユーザエクスペリエンス / インターフェースデザイン / 情報デザイン |
研究実績の概要 |
SNSなどインターネット上のコミュニティを介して、援助依頼情報が提示されることを想定し、どのような援助依頼情報であれば、より多くの人が援助行動を行っても良いと考えるかについて、実験によって検討した。ここでいう援助依頼情報とは、社会課題に関するものであり、例えば「カンボジアで学校建設するための募金をお願いします」といった金銭や物品の寄付に関するものや、「地域のゴミ拾いに参加してくれませんか」といった参加募集に関する物など、様々な利他的行動を求めるものである。 平成28年度は、10名の協力者に対して援助依頼情報からどのように、利他的行動の判断を行うか、その思考プロセスを発話思考法によって把握した。なお、提示した援助依頼情報は平成27度実施した600名に対するWebアンケート形式の調査と同様の援助依頼情報を用いた。得られた発話データは、定性的な情報を分析するM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析し、判断プロセスの構造分析を行った。 この分析での重要な気づきは、大きく2つのステップで判断プロセスが構成されている点である。ステップ1は、「依頼内容への反応」であり、感情的な反応や依頼主への信用度、あるいは困っている対象への同情といった、比較的情動的な反応が基本的な態度の報告づけに影響する。ステップ2は、援助内容に対する評価であり、援助の種類によって「損得勘定型の評価」と「責任型の評価」の2つの評価の観点がある。主に責任型は地域コミュニティに関する内容について、特に顕著な評価の観点である。これらのプロセスをへて総合的に利他的行動を判断する、という構造がわかった。 この結果を元に、依頼情報の提示情報や提示方法(見せ方やデザイン)と判断プロセスへの影響や貢献度を考慮し、依頼情報を5つの提示デザインに関するガイドライン案(5項目)を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究成果から、当初計画していた譲り合い行動は、利他的研究のごく特殊な状況であることがわかったため、利他的行動に対象を拡大して研究を進めた。また、当初計画ではHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)をデザイン対象としていたが、研究協力企業との調整がつかず協力を得られなかったことや、組込み系システムによるインタフェースデザインよりも、サービスデザインへとデザイン分野の研究課題が変化してきたことから、SNSでの依頼情報を想定したインタフェースデザインへと、適宜研究計画の方向修正を行った。これらのことから、適宜行った計画の修正に照らして考えると、概ね順調に推移していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、依頼情報のデザインガイドライン案に基づいて修正した依頼情報に対して、再度評価を実施した。その結果、効果が認められたのは地域コミュニティに関する2つに対してであり、国際問題については十分な効果が得られなかった。その理由については、個人的要因などの要因の影響が想定されるが、これまでの研究では十分に明らかになっていない。また、これまでは依頼情報の提示の方法は、1画面に提示するに止まっていたため、インタラクションを想定するまでに至っていない。 平成29年度は、依頼情報のテーマとデザインや掲載情報種別との関係を分析し、デザインガイドラインを修正するとともに、インタラクションを前提としたデザインへの応用についても検討する。また、デザインを修正したプロトタイプを用いた評価実験を計画し、その効果について検証する。
|