平成29年度では、昨年度導出した利他的行為を促すデザイン改善点をガイドライン案(5項目)に基づいて、平成27年度に実施したアンケートの依頼情報を改善し、平成27年度と同様の方法でアンケートを実施した。その結果、4つの依頼情報のうち1つ(地域問題・バザー)は、利他的行動を増やすことができたものの、複数の依頼情報では行動を促すことができないばかりか、Webサイトから得られる印象が改悪していることがわかった。これは予想に反する結果だった。考察してみると、デザインを改善したことにより、情報がより充実した一方で、大規模サイトの寄付サイト(例えば、検索サイトが運営するような)のようなWebサイトデザインになったため「自分が寄付などをしなくても、誰かが寄付してくれるだろう」という、印象を抱く回答者が増えたことがわかった。つまり、情報量とデザインが充実することで「責任分散」が促進された可能性があることがわかった。この発見は、本来の行動を促す目的とは逆の結果ではあるが、本研究の大きな発見であると言える。 一方、最近では人助けを目的としたスマホアプリなども登場している。これらは、利他的行動をすることに共感する人がアプリを入れる前提となる。そこで、どのような人がこのアプリを使っても良いと感じるかを研究することとした。これまでと同様の調査計画で男女300名ずつ600名に対し、4種類の人助けアプリ(実在するもの)のコンセプトを提示してその受容性を評価した。その結果、SNSの活動度および地元愛の強さの両者が、強く影響していることが示された。 また研究成果を発表する場として、2018年3月3日に「利他的UXフォーラム」を開催し130名の参加があった。 本研究により、システム等の支援により利他的に振る舞う可能性の高い層を示した上で、利他的行動を促すためのガイドラインを構築する予定である。
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