アフォーダンスとはGibson.J.Jによる造語で「周囲の環境が動物に意味を与える,または動物が周りの環境に意味を与えること」とされており,近年注目されており,家具やWebデザインなどの人工物のデザインに用いられる.一方,サイン音について考えると,「ピンポン」「ブブー」のような音の意味が直観的に理解できる特徴,つまり音のアフォーダンス性によりデザインがなされている.音を聴取しただけで人にメッセージを伝える特徴こそがサイン音の主たる目的であると言え,このような現象を実現する要因を本研究では「音響アフォーダンス」と呼称する.サイン音の制作では,作曲家や音デザイナーらの長年の勘と経験に委ねられて作成されることが多く,どのように制作すれば聴取者に所望の情報を伝えられるのかについては理論的には確立されていない.音響アフォーダンスは音に対する判断の客観性を示し,本プロジェクトでは,和音進行に対する親密さを調査すべく,脳波計測を行なった.特に,Cmaj及びFmajとFminの和音を用いたMMN課題を聴取者に提示し,MMNの出現時刻に着目した実験を行なっている.その結果,MMNの出現時刻に差異が見られ,音に対する潜在的意味の違いを聴取者は知覚し,脳内での処理が異なることを示した.次に,音楽経験による影響を受けない実験タスクとして,高さの異なる2つの音からなる和音を用いて,協和性とノートハイトによるMMN成分を調査し,その出現時刻について検討した.これにより,音の潜在的意味の有無における脳波計測から,音響アフォーダンスの存在可能性について考察した.その結果,従来手法である和音を用いたMMN課題に比べ,顕著なMMNが抽出できることが確認された.
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