「和食」は世界的にも人気があり、日本独特の野菜食材(和野菜)と調味料によって醸し出される風味が特徴である。本研究では、和野菜の風味のうち香気特性に着目し、その生成制御に関与する因子を解明することを目的とした。今年度は以下の点について研究を進めた。①ショウガの主要香気geranialの生成に関与するgeranyl acetate加水分解酵素について:昨年の粗酵素を用いた実験により、ショウガ根茎中にはgeranylacetate エステラーゼ活性があることが分かった。そのため、トマト果実の香気エステルに対するエステラーゼ酵素遺伝子情報を元に、ショウガESTデータベースを用いてエステラーゼに関与する候補遺伝子をスクリーニングし、完全長cDNAを得た(3種)。それぞれ大腸菌における異種発現により酵素を得て活性を調べたが、いずれもgeranylacetateに対する活性が認められなかった。現在、さらに他の候補遺伝子についても活性確認中である。②ゴボウの独特な香気に着目し、香気抽出物を得、まず香気寄与成分の確認を行った。Aroma Extraction Dilution Analysis法により確認したところ、未同定成分1つを含む5種の香気成分が顕著に寄与することがわかった。そのうち、土臭い香気をもつ2-methoxy-3-(2-methylpropyl)-pyrazineおよびその異性体である2-methoxy-3-(1-methylpropyl)-pyrazineの寄与が高かった。それぞれ定量を行ったところ、これらの成分含量は産地によって大きな差はなかったが、ゴボウ根の先端部よりも地上部に近い太い部分のほうが含有量が大きいことが分かった。また、加熱による変化もないことを確認した。
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