研究課題/領域番号 |
15H02898
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
玉置 俊晃 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (80179879)
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研究分担者 |
井本 逸勢 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30258610)
石澤 有紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (40610192)
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (60432754)
土屋 浩一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (70301314)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 亜硝酸 / 硝酸 / AMPK / エピゲノム解析 |
研究実績の概要 |
染色体から1塩基レベルまでの網羅的ならびに高感度ゲノム・エピゲノム解析技術基盤と情報解析パイプラインの整備を進め、以下の成果を得た。1)次世代シーケンサーによる網羅的変異探索、マイクロアレイによる網羅的SNP検索、質量分析・リアルタイムPCRによる変異・SNP検索システムの整備とこれらを用いた、ヒト疾患の単一・多因子遺伝要因を解明した。 2)ゲノムワイドなDNAメチル化異常から、早期からメチル化により不活性化されるヒト肺がんの新規癌抑制遺伝子を同定した。 quercetinのグルクロン酸抱合体であるquercetin-3-O-β-D-glucuronide (Q3GA)の血管内皮細胞保護効果を検討した。Q3GAでヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)を1か月間の長期刺激後、マイクロアレイ解析(Agilent)および、ヒトビーズチップを用いたDNAメチル化解析(Illumina)を行った。その結果、血液凝固やフラボノイドの代謝に関わるいくつかの遺伝子でQ3GAによる発現の変化が見られた。一方、全ゲノムDNAのメチル化パターンを変化させていなかった。 亜硝酸塩とグルカゴンの関連について検討した。培養膵α細胞であるαTCに亜硝酸塩を添加したところ、濃度依存的なグルカゴン分泌の低下が確認された。培養肝細胞にグルカゴンを添加したときの培養上清へのglucose分泌に対する亜硝酸塩の作用を検討した。ヒト培養肝細胞であるFaO細胞にグルカゴンを添加したところ培養上清へのglucoseの分泌が見られ、ここに亜硝酸を加えておくと、グルカゴンによるglucose分泌はコントロールレベルまで低下した。以上の結果から、亜硝酸塩にはグルカゴンの分泌を抑制して肝細胞からの糖新生を抑制することで、血糖値を下げている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食餌性亜硝酸による生理的役割解明研究において、これまでの動物実験の結果から、亜硝酸塩を含んだ飲水をマウスに長期間与えることにより、空腹時血糖値が低下することが明らかになった。昨年、培養膵α細胞であるαTC細胞では、亜硝酸塩によりグルカゴン分泌の低下がおこることを見いだした。今年度は、この現象が濃度依存的であることを明らかにした。また、ヒト培養肝細胞であるFaO細胞では、亜硝酸はグルカゴン刺激によるglucose分泌を抑制することを見いだした。これらの成果は新知見であり、食餌性亜硝酸による生理的役割解明に着実に前進している。 ヒト培養細胞を用いて食餌性亜硝酸によるエピゲノム修飾を解明する研究では、細胞の培養方法や培養液成分が大きくエピゲノム修飾に関与するためか亜硝酸刺激による変化の評価はかなり困難を伴っている。しかしながら、ヒトならびにモデル動物を対象にした染色体から1塩基レベルまでの網羅的ならびに高感度ゲノム・エピゲノム解析技術基盤と情報解析パイプラインの整備を進めており、着実に解析技術を改善している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、亜硝酸が直接的にヒト培養細胞で5’AMP-activated protein kinase(AMPK)を活性化することを示してきた。また、ヒト培養肝細胞であるFaO細胞にグルカゴンを添加したところ培養上清へのglucoseの分泌が見られ、ここに亜硝酸を加えておくと、グルカゴンによるglucose分泌はコントロールレベルまで低下した。この結果は、亜硝酸塩にはグルカゴンの分泌を抑制して肝細胞からの糖新生を抑制する作用が示唆される。今後は、その詳細な機序を検討する。亜硝酸刺激に対するヒト培養細胞におけるエピゲノム修飾を明らかにするため、DNAメチル化のマイクロアレイを用いた研究をさらに進める。
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