血液中p62/SQSTM1測定用ELISAのキット化に向けた研究を進めたが、ELISA法にて用いるための抗体感受性などの技術的な問題が解決できず、p62/SQSTM1のELISA法による臨床検体の測定には至らなかった。肝組織を用いた分子生物学的な手法による測定法を行うことが現時点では最適であると考えられた。これには、実際の生体内でのp62/SQSTM1の血液中濃度がかなり低いこと、腫瘍性病変と違い良性病変では発現強度が低いこと、なども一因と考えられた。 臨床研究においては、p62/SQSTM1をもちいた診断の特異性を高める目的で、Keap-1分子を併用して評価を行い、抗酸化能とともに評価することの有用性を確認した。 さらに、脂肪化にともなう新たな分子マーカーを同定した。この分子は、脂肪化により脂肪を覆う脂質二重膜上に発現し、脂肪化をさらに増強し、また脂肪肝による肝細胞傷害を促進することでNASH病態の進行に関連することが考えられた。今後、この分子NASH進行における役割を、特にプログラム細胞死の観点から検討する予定である。 p62/SQSTM1分子に関しては、NASH病態に対しての特異性を検討した。p62/SQSTM1は正常な臓器においてもユビキタスに発現するが、腫瘍などにおいても発現が増強することが確認された。また、NASHにおいても、発症早期にはp62/SQSTM1の発現が低下するものの、後期にはその発現が上昇していることが確認された。初期には、肝細胞に小滴性脂肪蓄積が認められ、後期では大滴性脂肪蓄積が認められたことから、臨床的な意義が大きいことが推測された。
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