研究課題
我々は、アルコール性脂肪肝を誘導した雄マウスと通常の雌マウスを交配した仔は、通常両親の仔に較べて血中中性脂肪値が高く、肝トランスクリプトームに差が見られることを見いだした。さらにこの差異が雄親へのレスベラトロールの同時投与で解消されることを確かめた。本年度は雄親精子DNAと仔肝臓DNAをメチル化DNA結合タンパク質を用いて精製し、次世代塩基配列解析を行うことによりゲノムワイドなメチル化データを得た。雄親精子DNAと仔肝臓DNAそれぞれにおいて、対照群、アルコール群、アルコール+レスベラトロール群との間にメチル化状態の顕著な差異が観察された。さらに一部の変動部位は群間の変動パターンが親子で一致しており、変動部位の継承が示唆された。これらの変動部位について、仔肝臓で発現変動した遺伝子の転写開始点や発現制御領域(エンハンサー)との位置関係を解析し、一部のメチル化変動部位が仔肝臓で発現変動した遺伝子のエンハンサーと一致していることを確かめた。さらに、レスベラトロールの作用候補であるCARの動態を調べるため、CARのヘテロマーパートナーであるRXRに対する染色体免疫沈降(ChIP)を行い、通常食あるいはレスベラトロール食を与えた野生型マウスの肝臓におけるゲノムワイドなデータを得た。これは今後のChIP解析における比較検討のための基礎的データとなる。最後に野生型マウスとCAR欠損マウスを用いた2世代実験を再度行い、親世代と仔世代の染色体免疫沈降とメタボローム解析に用いるためのサンプルを得た。
2: おおむね順調に進展している
野生型マウスとCAR欠損マウスを用いた2世代実験を再度行い、染色体免疫沈降とメタボローム解析のための仔世代のサンプルを得た。全体としてほぼ予定どおり進展している。
今後はDNAメチル化に加えて、ヒストン修飾に関するゲノムワイドなデータを得る。仔のトランスクリプトーム、メチロームと比較することにより、仔の健康に影響するようなエピゲノム部位の探索を行ってゆく。
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