最終年度は,経験帰納的学習(EBIL)で活用する経験の展開,および実践に重きを置いた。 1 理論:特に,EBILから課題解決型学習への移行として,受講者が能動的になるために授業者が必要なこととしてOODAループの利用を検討してきた。 2 自然現象の抽出:活用する経験として,自然現象(自然の構造)だけでなく言語(英語)構造との比較も行い,その類似性から物理の理解・捉え方の導入展開を行った。EBILの提案で挙げたように,本来の物理は自然界のルールを明らかにするものである。われわれは日常生活の中でこのルールを無意識に認識し,物理ではこのルール(自然の構造)を微分方程式という形(ある条件下で解いたものが公式)で表す。一方,言語はコミュニケーションツールであり,母国語に関してはほぼ無意識に使うことができるが,第二言語に関してはその言語構造である文法を学ぶ。これは,自然を表す微分方程式と言語を表す文法には対応関係が成立することを意味し,この詳細を検討した。また,自然現象としては,虚像,惑星の逆行運動,超伝導体作製などを基に深い学びに展開した。 3 実践:「物理と英語は異なるものか?」と題し,本学の理科と英語科の学生にアンケートおよび授業を行った。準備に時間が掛かったため意識の変容までは確認できなかったが,継続して研究をしているところである。また,鏡で経験する「虚像」を題材に,本学理科の学生に対して,光の場合だけでなく音の場合を実験し,虚像に関する深い理解を促した。これらは平成30年度に理科実験教室等で小・中・高校生を対象に実践する予定である。高等な内容として,超伝導体の急速作製・測定という実験経験を帰納させて,その意味を知る実践を「ひらめき☆ときめきサイエンス」で行った。別件になるが実践の一部として,宮城県教育委員会との仕事で高等学校課題研究指導マニュアル作成に編集委員長として参画した。
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