研究課題/領域番号 |
15H02912
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 昭三 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 名誉教授 (10018822)
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研究分担者 |
兵藤 友博 立命館大学, 経営学部, 教授 (20278477)
岡野 勉 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30233357)
種村 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30263354)
矢田 俊文 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40200521)
伊藤 稔明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40295572)
土佐 幸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40720959)
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50242392)
興治 文子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60409050)
北林 雅洋 香川大学, 教育学部, 教授 (80380137)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 明治理数教育の新実態 / 生徒の理数授業筆記 / 教育実習教案筆記 / 能動学習型授業法 / 小学校生徒用物理書 / 原子・分子・階層性 / 世界トップ水準に挑戦 / 日本型理数教育授業実態 |
研究実績の概要 |
本研究は新潟県村上の木村家文書や同県与板の永井家文書のような高等小学校生徒の授業筆記の探索・分析・解明をする研究からスタートした.そして,高等小学校生徒の物理学筆記や化学筆記,理科,植物,動物,生理学や金石学の筆記,加えて,教師や教育実習生による教案筆記,試験問題・解答記録などの発掘・発見・分析・解明を進めてきた。そのような,当時の教育現場の授業実態を直接的に示す授業記録によって明確に証拠づけ・確証するという新手法に基づいて,明治中期の教育史における知られざる真相を解明するという、従来にない研究手法によるプロジェクト研究を本格化させた。そして,授業筆記の探索調査を,新潟各地から近隣県・関東・東北・中部・北陸へと拡大していった。特に,初年度には隣接した地域における集中的かつ網羅的な探索調査を重点的に実施した。しかし,同時に,機会をとらえて日本全国(北海道から中国・四国)における理数教育分野の授業に係わる生徒筆記・授業記録を,広く網羅的に探索・集積するよう努めてきた。 その結果,北海道・東北・関東・中部・北陸・近畿・中国・四国に及ぶ全国各地をかなり網羅的にカバーする探索調査を実現した。そして,明治20~30年頃の教育現場におけるリアルな授業実態を解き明かして,知られていなかった明治理数教育の真相・価値を解明できるような貴重な史的筆記文書を相次いで発見できた。従来型の研究手法(法令や出版された教科書研究が主とされる)では,把握できなかった新しい授業実態,即ち,理科開始後の明治20年代以後にも,法令や選定教科書の範囲をはるかに超えた授業が行われていた実相を究明し,世界先端的な物理学・化学・生理学ほかの科学教育が明治中期においても実施された明確な証拠資料を集積できた。理数教育史の真相を究明するための明治理数授業筆記等の網羅的な探索と現代的に甦らせる包括的研究とを新展開させてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に新潟や長岡の文書館でデジタル化が開始された初期から筆記文書目録の入力情報を直に協力的に伝聞し検索できる幸運もあり,明治中期の科学教育現場の真相を示す物理学筆記や化学・生理学・金石学筆記,試験記録等を効果的に収集できた。その後にも継続して網羅的に大量収集できた。中越地震に於いて被害を受けた蔵から長岡の文書館に救出された文書の存在を知り、訪ねた文書担当者が新潟大学教育学部卒業生で、その全面的協力による集中的な収集ができ,効果的で有益な膨大な資料の蓄積が可能になった。そのような経験を生かして,引き続いて埼玉や茨城や群馬や長野において,同様な文書館の協力を得ながら授業筆記や授業記録の収集を網羅的・集中的に実施し大量な成果物を蓄積できた。こうした貴重な文書で証拠付ける新手法で,明治の理数教育に関する数多くの新知見を確証してきている。さらに,日本各地(北海道・東北・関東・中部・北陸・近畿・中国・四国)の貴重な史的文書の新発見を続々と実現して,明治中期の理科・科学教育の真相,法令や教科書の指定のような束縛をはるかに超えた「世界最先端の科学教育」を理科開始後も日本各地で新展開したことが確証できつつある。その際,全国的に多くの研究協力者に恵まれ,彼らとの連携した文書資料を探索する取り組みに全面的な協力を得たことが有効だった。関西では京都や兵庫の協力者,四国では香川大学の研究分担者,埼玉や長野や茨城では文書館や図書館の全面的協力を得た。こうして,どのような科学教育の授業が行われ,どのような教科書をどう活用されたかなどの新たな資料を発掘して,決定的な手掛や証拠を有する資料を蓄積できた。明治19年の小学校令下で理科が開始された後にも約10~20年後まで,世界的に見ても先端的な物理学・化学・数学、等の理数教育が実施されたことを確証しつつある。以上のように,本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
収集した未整理な文書データの部分を全検索出来るように整理して,文書館に於いての未収集部分の補充用検索に役立てることで,より網羅的な文書データベースの構築を目指すべく,今後とも,日本各地の文書館等を訪問して,欠けた文書を補充するような探索・撮影・収録の取り組みを実施する。そのようにして,授業筆記文書のデジタル・リポジトリ-の網羅的なデータベース化を目指す。 理数分野の授業記録・教育遺産に関するデータベースを網羅的に調査分析して,日本の理数教育史における知られざる新知見の確証を目指す。近年まで私達が新展開してきているアクティブ・ラーニング型授業法に関しては,その国際的な歴史的変遷を辿りつつ,その現代的な再構成を目指す。当時の科学教育の最先端に挑戦した日本や韓国や中国などの生徒と教育者,日本やアジア(日本への留学生も含む)と,欧米などの教育者や教育研究留学生による理数教育をめぐる国際的な研究交流や相互連関をめぐる実態などについて調査分析して,国際的な見地から新考察を加えつつある。特筆すべき希少価値がある宇治橋の授業筆記発見を足掛かりに,理科筆記・物理学筆記・化学筆記・生理学筆記・算術筆記などの全分野が揃っているような事例を更に蓄積する。それにより,パーカー・ガノ-・カッケンボス型(『物理全志』『物理小誌』『物理小学』他)のもの,ハクスレイ・スチュワート・ロスコ―型(『物理小学(士氏)』『スチュワート物理学』『ロスコ―化学』他)のような授業内容の検証を,各地の教育遺産を網羅的に探索し蓄積することで,今後とも前進させる。 その基盤上に最新のICTを活用した動的な視覚化による手法等で,明治理数授業の核心部を今日的に甦らせる。こうした現代的なアクティブラーニング型理数授業の新展開や新発展を可能にする,歴史的な教訓と価値の網羅的探索を前進させ,その現代的再構成研究を新展開する。
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