研究課題/領域番号 |
15H02914
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
加藤 淳太郎 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (80303684)
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研究分担者 |
大鹿 聖公 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50263653)
神戸 敏成 公益財団法人花と緑の銀行, その他部局等, 企画情報課長 (00393108)
藤枝 秀樹 国立教育政策研究所, その他部局等, 教育課程調査官 (20741705)
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
村井 良徳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (30581847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高等学校生物 / 植物 / 科学的探究 / カリキュラム |
研究実績の概要 |
本研究では、先端科学の生命科学分野の具体的理解を補助する実験・観察教材等の開発とそれらの探究的学習、実践、理解のためのカリキュラム開発を行う。 『ABCモデル理解のための調査』:クラスC変異体の表現型であり重要な園芸形質の八重について園芸植物を中心に調査した。八重は「雄蕊ー雌蕊を欠く八重」、「葯糸花弁化+雌蕊有の八重」の大きく二種に分別され、ABCモデルの理解には前者を用いる必要がある。『切り花受粉による種子形成』:Lycoris属植物の切り花を受粉後、子房培養を行い、発芽個体の獲得に成功した。『花粉管伸長』:教材用タイムラプス画像の試作を行った。花粉管の発芽・伸長に関わる要因調査では、多糖類が花粉管の発芽に細胞外刺激として影響することが示唆された。『植物の成長に影響する光質』:種子発芽への光質の影響を野沢菜で調査した。青と赤は白より子葉展開を抑制し、胚軸長は青で短く、橙および赤と白は同程度、緑と暗黒で長くなる傾向が見られた。『紫外線に関する植物の応答』:高山植物が蓄積するフェノール化合物調査から、紫外線防御機能をもつケルセチン配糖体等を単離し、紫外線防御を確認する教材開発を検討した。『野生絶滅種コシガヤホシクサの野生復帰に向けた繁殖生態学的解析』:自家受粉による近交弱勢を示す形質が見出され、自家受粉抑制には高い個体密度が有効であることが明らかになった。 『現カリキュラムの「観察・実験・探究」の教科書分析』:EASE2016において、新カリキュラムの「観察・実験・探究」の教科書分析を報告し、現職の教員に項目の見直しを行ったアンケート調査を行った。 『カリキュラム開発』:A「花粉管伸長」、B「震災によるかく乱」、C「ABCモデル」で検討し、Aでは画面上での伸長測定法、Bでは授業用ワークシート作り等のための追加素材、Cでは実際に使える植物などを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究課題であり最終年度に向けて、1. 教材化に向けて積極的に検討して行く、2. 研究を継続し教材化もしくは教材的素材として検討して行く、3.素材化を中心に検討して行く、の3種類に分別された。 1.については、A「体験的にABCモデルを学習する教材」、B「震災によるかく乱」、C「花粉管伸長」のうちAについては1件、Cについては2件、平成28年度に学会発表を行った。2. についてはD「絶滅植物や絶滅危惧植物の現状と保全、野生復帰」、E「紫外線に関する植物の応答」、F「進化と系統」、G「移入植物」、H「倍数性」のうちDについては4件の学会発表、Eについては2件のシンポジウム発表と1件の論文、Fについては3件の論文と2件の学会発表、Gについては1件の学会発表、Hについては2件の学会発表を平成28年度に行った。3. については、I「水生植物の受粉戦略」J「植物の種子形成」、K「異数性」、のうちIについてはH28年度に1件の学会発表があり、内容的にもインパクトが強いものである。一方で教材化の検討の中で扱う内容が多岐にわたってしまうのではとの意見があり素材化を中心に進めることになった。Jについてはラン科植物で胚珠に花粉管が到着している画像を得ることができているが、雌性側の減数分裂については細胞が不透明であることが原因で観察は困難と結論された。一方、切り花を用いた受粉と種子形成についてはH29年度に学会発表を検討することになった。Iについては、形態的な差が顕著でないことが明らかになったので当初の「遺伝子発現」から「異数体」の項目に移動し素材化を検討する。 現行カリキュラムの調査では、「教科書調査」で2本、「現行カリキュラムの履修度合いのアンケート調査」で1本の学会発表をH28年度行った。以上の成果を勘案すると、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度が最終年度であることから、生命科学カリキュラム部門と植物科学研究部門が連携し、「1. 教材化に向けて積極的に検討して行く項目」について授業を構想し可能であれば実践を試みる。「体験的にABCモデルを学習する教材」に関しては、ストック、シクラメン、ペチュニア、カランコエの八重咲きについて材料としての適否を検討後、学部学生にむけて実践を試みる。 「震災によるかく乱」と「花粉管伸長」については植物科学部門との連絡を密に取り、素材のリクエスト-提供を行い、さらに現職教員からの意見聴取を行い、高等学校での実践を念頭に進める。 「絶滅植物や絶滅危惧植物の現状と保全、野生復帰」、「紫外線に関する植物の応答」などについては、植物科学部門で研究を継続するとともに、カリキュラム部門で教材化の検討を同時に行い、可能な項目においては授業構想をたて、現職の教員から意見聴取を行う。同時に新学習指導要領についても情報を収集し、新学習指導要領での対応可否の検討を行う。また、植物科学部門の植物園スタッフとカリキュラム部門と密に相談をし、一般向けイベントでの教材としての使用を検討する。 授業構想、高等学校もしくは大学での実践に関しては、まとまるものは教育系の学会で報告するとともに、継続して行う植物科学研究部門の研究成果は、理学(植物)もしくは農学系の国内もしくは国際学会等において順次発表を行っていく。
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