本研究の目的は,学習者が創作者と利用者の両方の立場で著作権に対する理解を深めること,また二次,三次と派生していく著作物の権利を,創作者コモンズの一員として,文化の発展の見地で検討できる著作権学習環境を構築することにある。ここで,創作者コモンズとは,創作者集団による創作のための資源共有地と定義する。創作者コモンズの中で,創作者の権利を尊重した上で,共同著作や派生著作を考え,著作物を共同創作する際の合意形成の経験を積むことにより,情報社会に主体的に活動できる人材育成を目指すものである。 本研究では,このような目的を達成するために,具体的な2つのシステムを開発してきた。一つは画像で表現される(絵の)著作物を継承・派生を行うことのできるシステム,もう一つは,プログラムの著作物を対象とし,プログラミング教育の文脈から,著作物の共同・派生を考慮することが可能なシステムである。これらのシステムを通し,創作者および利用者の立場から,著作権の学習を行わせ,効果評価を行ってきた。 本研究で開発した上記二つのシステムの構築と実践に関しては,既に2017年度までに査読済み論文にまとめ,公表している。2018年度は,本研究の最終年度であり,これらシステムのインターフェース等の改善を図るとともに,学習の効果を広く周知する展開期と位置づけて研究を推進してきた。具体的には,大学ICT推進協議会情報教育部会と,情報処理学会一般情報教育委員会とが共同で行ってきたシンポジウム「これからの大学の情報教育2018」において,ワークショップの一つとして,本システムをスマホで実行する取り組みの紹介等を行った。
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