研究課題
昨年度と同じく、分担者加納と橋本による京大古地震研究会での活動の一環である「みんなで翻刻」のシステム開発を中心にして研究を進めた。本年度より、「みんなで翻刻」の開発者で、林の研究室の院生だった橋本が、千葉県にある国立歴史博物館の助教となり京大を離れ、また、科研研究者の資格を得たため、橋本を分担者として橋本中心の研究体制に改めた。その新体制のもと、主に次の三つの研究・開発を実施した:(1) IIIF (International Image Interoperability Framework)への対応、(2)全文検索エンジンの導入、(3) 翻刻文の品質調査。(1)により、「みんなで翻刻」た、国際的なデジタルアーカイブの画像共有規格であるIIIFに対応し、国文学研究資料館や国立国会図書館、また国外の大規模図書館が提供するデジタルアーカイブ画像を自由に取り込める様になった。(2)の「全文検索」は、膨大な翻刻文利用のために不可欠な機能ではあるが、実装に手間がかかるため後回しになっていたものである。これら二つの機能は、橋本が設計し業者に発注して実現した。29年度の終わりまでに、「みんなで翻刻」の活動により、東大地震研所蔵の古地震史料約500点の9割以上もが翻刻され量については大きな成果を得た。しかし、ボランティアの翻刻の質が十分に高いのかという大きな問題があった。(3)は、この疑問に答えるために行った研究で、謝金を支払い、日本史分野の博士号を持つ研究者に、翻刻文10万文字に含まれるエラーの件数のチェックを依頼した。その結果、「みんなで翻刻」の翻刻文の正確性は非常に高く98~99%であることが判明した。これは日本の江戸期以前の古文書の市民参加型翻刻の可能性を強く支持する重要な成果であると考える。これら以外にも従来型のツールSMART-GSの開発を進めた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
「みんなで翻刻」は、学界以外からも注目を集め、ニコニコ生放送、ニコニコ超会議などで、市民に向けて情報発信を行った。
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