研究課題/領域番号 |
15H02954
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
日高 真吾 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (40270772)
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研究分担者 |
園田 直子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (50236155)
末森 薫 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 機関研究員 (90572511)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 民俗文化財 / 保存修復 / 応急措置 / 一時保管 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、1)被災地で実施できる被災民俗文化財の保存修復方法の開発、2)一時保管場所の環境改善対策の確立、3)被災民俗文化財を対象とした民俗調査の実施の観点から研究をおこなった。 1)「被災地で実施できる被災民俗文化財の保存修復方法の開発」では、被災した民俗文化財の応急措置法の技術開発を目指した。特に今年度は火災による消火剤で汚損した民俗文化財を想定し、研究を進おこない、その技術開発に成功した。また、火災による消火活動の影響調査について、粉塵や臭気測定など新たな視点での測定方法について実践的な研究をおこなうとともに、博物館における避難誘導体制の在り方についても新たな知見を得ることができた。 2)「一時保管場所の環境改善対策の確立」では、平成26年度に環境改善をおこなった旧月立中学校を拠点に、引き続き、温度湿度の測定、生物生息調査、浮遊菌・塵埃調査、光の測定、大気環境の測定を実施し、IPMによる施設運用の水準をさらに高めていくことをめざし、その効果について検証を進めた。このなかで、平成28年度は、緊急雇用制度の終了で、これまでの運用体制が維持できなくなったことで、新たな一時保管場所の環境管理の課題について明らかにすることができた 3)「被災民俗文化財を対象とした民俗調査の実施」では、被災文化財の活用を目指している国内外の地域博物館の調査と情報交換を展開するため、2009年の台風で壊滅的な被害を受けた台湾小林村の災害展示に協力している国立台湾歴史博物館との連携研究を実施し、2017年度のシンポジウムを開催するための準備をおこなった。また、災害からの復興のありようとして、郷土芸能復興支援メッセを大船渡市で開催し、被災した文化財の復興の重要性について市民と情報を共有できる場を創出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるにあたり、立案した研究計画を進めることができているとともに、海外での公開シンポジウムの協力など、その成果公開の計画が大きく進展しているため。具体的には、台湾の桃園市大渓において、国際フォーラム「地域文化の発見、保存、活用」を企画実施し、研究代表者および研究分担者は、発表とコメントなどをおこない、主体的に参加した。そのほか、文化財保存修復学会等において、本研究の成果を発表し、その成果公開に積極的に務めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度に引き続き、1)被災地で実施できる被災民俗文化財の保存修復方法の開発、2)一時保管場所の環境改善対策の確立、3)被災民俗文化財を対象とした民俗調査の実施の観点から研究を進める。 1)「被災地で実施できる被災民俗文化財の保存修復方法の開発」では、被災した民俗文化財の応急措置法の技術開発を目指す。ここでは、洪水、火災で被災した民俗文化財を想定し、研究を進める。 2)「一時保管場所の環境改善対策の確立」では、平成26年度に環境改善をおこなった旧月立中学校を拠点に、引き続き、温度湿度の測定、生物生息調査、浮遊菌・塵埃調査、光の測定、大気環境の測定を実施し、IPMによる施設運用の水準をさらに高めていくことをめざし、その効果について検証を進める。特に、職員の常駐ができなくなった影響について調査を進めることとする。 3)「被災民俗文化財を対象とした民俗調査の実施」では、被災文化財の活用を目指している国内外の地域博物館の調査と情報交換を展開するため、2009年の台風で壊滅的な被害を受けた台湾小林村の災害展示に協力している国立台湾歴史博物館との連携研究を実施する予定としている。 そのほか、台湾において国際シンポジウム「負の歴史遺産、当代の歴史意識と博物館」において、「生活文化の記憶を取り戻す-文化財レスキューの現場から」として、本研究成果を発表する。また、文化財保存修復学会等において、本研究の成果を発表する。
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