研究課題/領域番号 |
15H02956
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
冨士田 裕子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (50202289)
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研究分担者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (00250150)
井上 京 北海道大学, 農学研究院, 教授 (30203235)
紀藤 典夫 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30214836)
近藤 玲介 皇學館大学, 教育開発センター, 准教授 (30409437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植生変遷 / 花粉分析 / ルミネッセンス年代測定 / AMS14C年代測定 / 地形 / 堆積物 / 大型植物遺体 / 海水準変動 |
研究実績の概要 |
寒冷地の湿原の発達史は、海水準変動や気候変動といった古環境変遷の解明に寄与する。本研究で対象とする北海道北部の猿払川流域には、複数の湿原が下流から上流まで連続して出現し、縄文海進期以降の沖積平野の発達とともに形成された一般的な低地湿原とは異なる発達史が予想される。本研究は、猿払川流域の湿原群の形成と地形発達との関係を解明し、他の低地湿原の形成過程との比較により、北海道北部の第四紀後期の海水準変動や気候変動、構造運動や土石流等の動的地形要因が、湿原発達に与える影響を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、上流部の上猿払西湿原と中流部の猿払川丸山湿原で機械式ボーリングにより総長18m、28mのコア試料を採取し、下流部の浅茅野湿原、浅茅野アカエゾマツ湿原でハンドボーリングにより総長10m前後のコア試料を採取した。これらのコア試料を用い大型植物遺体分析、花粉分析、珪藻分析を行い、植生や堆積環境の変遷を検討した。また、猿払川流域周辺で地形・地質に関する野外調査を行い、採取試料やコア試料の基礎的物性値測定、各種地質年代測定を実施した。植生調査は上流部の湿原を中心に実施し、水文環境を知るため、3ヶ所で自動記録式地下水位計による浅層地下水位の連続観測と降雨量の観測を継続した。 これまでの各種分析結果等から、中流部の猿払川中湿原では,過去1万年前から現在までの海水準変化の影響で、淡水域から汽水域,再び淡水域に変化して表層部に泥炭が厚く形成されたと推定された。また猿払川丸山湿原も類似の形成過程をたどった。一方、上流部の上猿払西湿原では海水が入り込む環境になったことはなく、湿原の形成初期には,河川の氾濫が頻繁に起こっており、ハンノキやミズバショウが生育する湿原が形成され、ヤチヤナギやカヤツリグサ科草本からなる湿原は、約1000から2000cal yr BPに形成されたと推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の交付申請書の研究実施計画通りに、機械ボーリングやハンドボーリング、野外調査、室内分析を実施した。コア試料を用いた各種分析も順調に進んでいる。学会発表も精力的に各自が行い、これまでの成果について第64回日本生態学会大会(2017年3月17日)で自由集会を主催し、他の研究者との意見交換等を行った。投稿論文も書き始め、共著者間での議論を行い修正している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の調査研究と総括を実施する。 猿払川流域の湿原群での植生調査結果をまとめ、補足調査を実施する。湿原の形状や植生と微地形の関係を解明するために、地形測量、自動記録式地下水位計による地下水位の測定、雨量計による降雨量の観測を継続する。後述のハンドボーリング結果も合わせ、植生タイプと環境の相互関係と遷移系列を明らかにする。 湿原成立とその維持機構の地学的背景を明らかにするため、猿払川流域において必要に応じハンドボーリングによる補備調査を実施する.また、猿払川湿原周辺の段丘などの地形・堆積物の記載を行う。記載時には、テフラやAMS14C年代測定試料を見出すことに努め、堆積物からルミネッセンス年代測定試料も採取する。空中写真判読により、野外調査による堆積物の記載結果も併せ、地形分類図を完成させる。採取した試料は、各種物性値の基礎的な分析を行い、AMS14C・ルミネッセンス年代測定の処理と測定を行う。テフラ試料は、鉱物組成や鉱物の屈折率などからテフラを同定する。 湿原形成史解明のため、平成28年度に実施したハンドボーリング・機械ボーリングボコア試料に関して、湿原の基盤形状、泥炭層の空間的分布状況を把握し、堆積物の厚さやその組成、表層泥炭の堆積状況、泥炭の有機物含量や粘土層の把握、植物遺体の状態などを明らかにし、コア試料の記載を完成させ堆積環境等を解明する。また、平成28年度に採取したボーリングの試料(平成29年度の補足試料も含む)の花粉分析、大型植物遺体分析、珪藻分析を実施・完了する。 全ての結果を統合し、各湿原の湿原植生の変化のタイミングや、堆積物の変化のタイミングを比較検討し、湿原群全体における植生形成史を検討する。さらに、猿払川湿原群の成立過程を検討し、北海道北部での第四紀後期の海水準変動や気候変動、構造運動や土石流等の動的地形要因が、湿原の発達に与える影響を明らかにする。
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