研究課題/領域番号 |
15H02957
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80304369)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水循環 / 水資源 / 水収支 / 山岳流域 / 同位体 |
研究実績の概要 |
鉛直1次元群落水・熱収支モデル(サブモデル①)と「鉛直1次元不飽和帯水収支モデル」(サブモデル②)を結合させ、樹木による土壌水分吸収の鉛直的不均質性と蒸発/蒸散比を正確に推定するモデルを構築した。また、その簡易版と集中型流出モデルを結合させたモデルに同位体過程を導入し、物理計測手段を用いない高頻度同位体データのみによるキャリブレーションでの高精度流量予測の可能性を示した。 3次元流域地下水流動モデル(サブモデル③)を長野盆地およびその周辺山域を対象として構築した。そして、火山体で涵養された地下水が流域界を越えて盆地の地下に流入している可能性を突き止めた。しかし、モデルパラメータの確定にはさらなる検討が必要であり、次年度の課題とする。また、当初予定していた地下水流動モデルパッケージだけでなく、地下水・地表水統合モデルパッケージの使用を視野に入れて、その有用性に関する検討に着手した。 このほか、太平洋沿岸から日本海沿岸までを含む中部山岳域における降水・河川水の同位体モニタリングおよび地下水・湧水・湖沼水・温泉水等の広域サンプリングと同位体分析を実施した。これらの成果をもとに、上記のサブモデルを統合した際に入力情報として必要となる同位体マップの作成と検証を行い、国際誌にて論文を公表した。この論文ではまた、河川水同位体比の実測値と予測値との乖離から流域水収支のインバランス問題を提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの開発に関しては概ね予定通りであるが、利便性が高いと思われる地下水・地表水統合モデルパッケージが市販されるようになったため、その使用を視野に入れた検討を行ったため、地下水流動モデルへの同位体過程の組み込みはやや遅れている。一方、筆者らがこれまで行ってきた同位体モニタリングの成果と本年度の取得データを一体化させ、新たな同位体マップモデルが完成し、そこから流域水収支のインバランス問題がある程度評価できる見通しがついたことは予想以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
広域的な同位体モニタリングを継続実施するとともに、各サブモデルの精度検証・改良ならびに統合化を着実に進め、流域水収支のインバランスを考慮した山岳流域水収支の高精度化を図る。また同時に、それらが一般社会に及ぼすインパクトについても検討を進める。
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