研究課題
本研究の4つの柱は(1)現状のハザードマップの体系的整理、(2)災害予測地図の高度化、(3)防災地図および避難情報伝達機能の高度化、(4)防災地理教育への展開、である。平成27年度は以下の通り実施した。(1)については、2014年8月の広島豪雨災害、2014年長野県北部の地震、2015年9月の鬼怒川水害地域において、現地調査により被害状況と被害特性を把握するとともに、現状のハザードマップと比較し,今後のハザードマップに必要な情報等について検討した。それにより、現状の土砂災害ハザードマップや水害ハザードマップの課題を見いだした。(2)の災害予測地図の高度化に向けて、東日本大震災の津波遡上高分布図を検証するため、気仙沼市において聞き取り調査を実施し、遡上高・浸水高や流路に関する情報を得た。活断層研究として、2014年長野県北部の地震の被害分布特性を明らかにするため、地表地震断層の浅部地下構造を探査し活断層の傾斜角を推定した。北海道積丹半島においては積丹半島西方断層(海底活断層)の活動と整合する変動地形を認定した。山梨県身延町においては左横ずれ活断層の存在を確認した。この活断層は、駿河湾の海底活断層から連続している可能性が高いため、地震防災上きわめて重要である。火山研究として航空レーザデータの比較により2014年御嶽火山噴火前後の地形変化を計測し、噴火前のデータ取得の重要性を指摘した。また、土砂災害研究として木曽山脈、養老山地、中国山地等における斜面変動と土石流発生に関する現地観察、地形測量、研究発表を実施した。(3)については、防災行政、ソフトウエア開発業者、研究者による合同会合を開き、緊急情報配信アプリに求められる機能を検討するとともに、アプリの開発および愛知県名古屋市における試験的配信について検討した。(4)については、現在の教科書における防災地理教育の扱いについての調査を継続して行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究のための会合を、東京で2回、名古屋で2回の計4回実施するとともに、鬼怒川水害等、災害発生後に現地調査を行って、多種の災害を対象とする研究の進捗状況を共有できた。また、2016年3月に早稲田大学で開催された日本地理学会公開シンポジウム「近年の災害が提起したハザードマップの課題-工学と地理学の視点から-」では、本研究の関係者が多く出席して議論を交わすとともに一般に情報を発信することができた。
本研究はおおむね順調に進展しているものの、各災害種に関する調査研究で収集・蓄積されたデータをとりまとめる必要がある。今後は、平成27年度に集積されたデータや知見を、体系的に整理していく。ハザードマップについては、類型化の指標の検討を行い、指標ごとの問題点を整理する。災害予測地図の高度化については、各災害について明らかとなった課題を踏まえ、災害の地理空間イメージを高めるための方策を検討する。防災地図および避難情報伝達機能の高度化については、防災訓練時等において地区を限定して情報の発信を試行する。防災地理教育への展開については、現状の教科書調査を継続するとともに、災害を具体的にイメージし、その理由を納得して備えられる教材開発の検討を開始する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 11件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 18件、 招待講演 1件) 図書 (5件)
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