研究課題/領域番号 |
15H02962
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中林 一樹 明治大学, 政治経済学研究科, 特任教授 (80094275)
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研究分担者 |
石川 永子 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 准教授 (00551235)
照本 清峰 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (10416399)
市川 宏雄 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (80298041)
坪井 塑太郎 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (80449321)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 津波災害 / 復興感 / 生活再建 / 地域復興 / 大船渡市 / 気仙沼市 / 新地町 |
研究実績の概要 |
東日本大震災では巨大津波災害によって犠牲者18,000人、全壊流出家屋12万棟、20兆円を上回る被害額がもたらされた。震災から6年、この津波災害からの生活再建・地域復興の進捗は順調とはいえず、被災地間のみならず被災者間の復興格差が顕著であることが、応募者の先行研究(2012-2015)からも明らかである。3年目にようやく被災市街地・集落の基盤復興事業が本格化したが、被災者の住宅再建や生活回復に5年目以降(2016~)に本格化するような状況にある。本研究は、毎年度継続してきた津波被災者復興感調査として、津波被災地の復興の進捗とともに、津波被災者個々の生活再建の実態と主観的復興感の進捗について6年目の調査を実施するとともに、被災者の復興状況に着目した復興過程の継続的構造分析を通して、巨大津波被害からの復興対策に資する知見を得ることを目的とし、以下の調査研究を進めた。 1) 津波被災者の生活再建の実態と復興感の質問紙調査(以下「復興感・回復感調査」という) 前年度調査と同一被験者を対象に、福島県新地町、宮城県気仙沼市、岩手県大船渡市における津波被災者の生活復興の進捗実態と復興感に関する調査を実施した(平成29年2月3,136件発送、1,082件回収)。実施に当たっては、前年までの調査結果から設問を精査し、復興状況に合わせた修正を加えた。 2) 研究成果の公表 地域安全学会石巻ワークショップ(8月)、災害復興学会石巻大会(10月)等で広く発表する(学会発表等参照)とともに、11月にはこれまでの研究成果の総合化に関する研究者ワークショップを明治大学(駿河台キャンパス)において開催した。 3)被災地現地調査 上記1)の調査機関に合わせて、2017年3月1-5日に調査対象の被災自治体を含む被災地域の復興状況現地調査および被災自治体担当者に聴き取り調査実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、被災1年目から大船渡市、気仙沼市、新地町の津波被災地域において被災した居住世帯を対象に毎年実施してきた先行研究(2012-2016年度)を継続し、これまでに回答していただいた世帯を対象として実施した。この「生活復興感・回復感に関する質問紙調査」が本研究の基幹であり、本年度は、前年度である平成28年2月実施の復興感調査(前年度実施分5年目)の分析を進めるとともに、平成29年2月に6年目の復興感調査を実施し、先行調査と同程度の回収を得ている。 質問紙調査対象地の自治体を訪問し、復興事業の現地調査および復興担当職員の聞き取り調査を実施して、市民の復興感の変化に復興事業の進捗が影響を与えている可能性がある一方、自治体としては、公共事業としての復興業務の進捗から、平常時業務へとシフトしつつあることが把握できた。 また、2012年度以降の先行調査における生活復興の実態や復興感の進捗の時系列的分析をすすめるとともに、5年間継続して回答いただいたパネルデータの整理・作成と時系列分析の準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、東日本大震災の津波被災市街地周辺における高台移転復興および低地部の盛土造成と土地区画整理事業による被災市街地・集落における地域復興を推進した復興集中期から、被災者の住宅再建が本格化する2015~2017年度を調査期間として、被災後5年目~7年目の福島県新地町、宮城県気仙沼市、岩手県大船渡市での津波被災者の生活再建と復興に関する調査を継続している。 仮設住宅生活期で復興公共事業が集中的に推進された先行研究2012~2015年3月(1年目~4年目)における津波被災者の生活復興プロセスと復興感(被災者による復興進捗の評価)に関する調査と、本研究での調査データを合体させ、被災者の復興プロセスの時系列分析に取り組むとともに、特に、被災後7年間の調査に継続的に回答を得た被験者のパネルデータに基づく復興過程の縦断面調査が可能となる。この復興過程のパネル分析調査は先行研究がなく、画期的な研究成果が期待できる それは、被災地の基盤復興と被災者の生活復興を中心とする、自治体復興計画の集中復興期と復興発展期の復興過程に対応した、災害復興の主体たる被災者の復興過程と被災者の復興評価(復興感)の時系列分析を可能とし、21世紀の災害復興科学の復興体系化に資する知見の獲得が期待できる。
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