研究課題/領域番号 |
15H02975
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高嶋 隆太 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 准教授 (50401138)
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研究分担者 |
森 俊介 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 教授 (80147503)
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
鳥海 重喜 中央大学, 理工学部, 准教授 (60455441)
鈴木 正昭 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (10431842)
田中 未来 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 助教 (40737053)
伊藤 真理 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (20778211)
桐山 恵理子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (70636266)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電力システム改革 / 再生可能エネルギー政策 / 市場均衡 / 電源構成 / 電力系統 / 電力利用選択 / 不確実性 / OR |
研究実績の概要 |
本年度は,(1)理論競争モデル(主担当:田中誠・伊藤・田中未来),(2)電源構成モデル(主担当:森・鳥海),(3)エージェントベースシミュレーションモデル(主担当:鈴木),(4)電力利用選択の分析(主担当:桐山)のそれぞれの研究項目を,以下のように遂行した. (1)再生可能エネルギー普及促進政策に関する理論競争モデルを構築して,社会厚生の点から最適なFIT価格とRPS要求割合を導出し,経済性の比較を行った。また,RPS制度のみならず,排出量取引政策の影響を分析するための電力市場とREC市場または排出量取引市場の経済分析モデルの構築を行った. (2)未利用エネルギーや新しい分散エネルギーシステム機器の特性,および天候変動の影響に着目して,①東京電力管内の地域別分散エネルギーシステムと全体的な電源計画の相互影響評価,②東京江東区と中央区をさらに町丁目単位で細分化した地域エネルギーシステムのモデル化と評価のモデル化を行った.また,包蔵量が300万KWある小水力について調査を行った. (3)RPS制度のみならずFIT制度の再生可能エネルギー普及促進策の影響を分析するための電力市場とREC市場のマルチエージェントシミュレーションモデルを構築した.各々のエージェントが同質である場合,理論競争モデルの結果と一致することが明らかとなった. (4)電力利用選択に関するアンケート調査を実施し,コンジョイント分析を行った.その結果,月額電気料金が現状よ10%減となった場合,再生可能エネルギー比率20%,原子力エネルギー比率20%に対する正味の効用は,正となることが明らかとなった. 本年度は,それぞれの研究進捗ついての報告会を3回(7月,12月,3月)実施し,3月の報告会においては,それぞれの項目の補完や比較について議論を行った.また,上記の成果の一部を,国内の学会や海外の国際会議,論文誌にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画を多少変更はしたが,おおむね順調に進んでいるものと考えている.それぞれの研究項目についての詳細は,以下のとおりである. (1)本年度予定していた計画どおり,再生可能エネルギー普及促進策のFIT制度とRPS制度の下での市場均衡モデルの構築,さらには,社会厚生を考えることで最適なFIT価格やRPS要求割合を算出することが可能となった.さらに,再生可能エネルギー政策と排出量取引制度の関係を明らかにするため,排出量取引制度と市場均衡の関係を分析する基本モデルの構築も行った.以上より,計画以外の研究も実施しており,予定以上に進展しているものと考えている. (2)本年度の計画では,FIT制度の見直し案やエネルギー供給構造高度化法の目標数値を電源構成モデルに組み込むことを考えていたが,現在,注目されている分散エネルギーシステムや再生可能エネルギー電源に影響する天候の変化をモデルに組み込むことで分析を行った。本研究課題の最終目標に向け,大きな進捗であったと考えている。 (3)FIT制度やRPS制度を分析するための電力市場とREC市場のエージェントベースシミュレーションモデルを構築することが目標であったが,予定どおり,両制度と市場内エージェントの意思決定との相互作用を分析するモデルの構築を行った。また,(1)で構築した理論モデルとの整合性も確認され,順調に進んでいるものと考えている. (4)当初の予定どおり本年度は,電力利用選択に関するアンケートを実施し分析を行った.上記のとおりエネルギー政策に示唆を与えるような結果も得られ,計画以上に進展しているものと考えている. 本年度は,上記項目のいくつかの進捗を国内学会や国際会議,論文等で発表し,さらに,OR系の国際会議では,本研究課題に関する特別セッションを開催し,関連研究者と議論することができ,来年度の研究目標が明確になったものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度でもあり,理論競争モデル,シミュレーションモデル,電源構成モデルによる経済・システム分析,エネルギー利用選択分析による統合的な分析・評価を通じて,エネルギー・環境政策へ示唆を与えられるように本研究を遂行する予定である.それぞれの項目の今後の研究の詳細は,以下のとおりである。(1)発電事業者が二酸化炭素排出量の削減を行うために,排出量取引(Cap-and-Trade; C&T)を行う経済分析モデルを構築する.また,自由化が進んだ電力市場において,異なる目的を持つ発電事業者と送電事業者の投資の意思決定を分析する.特に,電力価格,再生可能エネルギー,環境政策など,様々な不確実性の下での投資意思決定に焦点を当てる.(2)エネルギーシステムの今後の構築は複雑な制約と不確実性の下での意思決定が求められている.そこで,本研究項目では,地域分散型エネルギーシステムと大規模集中型システムの協調と競合,資源,環境,市場の様々な不確実性下の多段意思決定システムのモデル分析,新しい技術と制度の影響について電源構成モデル上で分析を行う.(3)種々の不確実性下での意思決定タイナミクス分析を可能とするためのエーシェントモテルを構築する.不確実性下での再生可能エネルギー普及促進や電力システムの安定供給リスクの観点からシステムの持続可能性に着目し,その評価・分析を実施する.(4)最新の再生可能エネルギーの賦存量について調査し,整理する.長期的なエネルギー選択と国民の支払意思額について分析する.また,原子力の比率と支払い意思額についても合わせてアンケート調査を実施する. 来年度は,研究代表者を中心にモデルの補完や比較分析を行うことを考えている。また,研究成果については昨年同様,それぞれの項目における進捗を国内学会や国際会議で発表すると共にORやエネルギー系のジャーナルに投稿することを考えている。
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