本研究では,インフラ構造物の微小振動からエネルギーを効率的に回収するカオス振動発電方式を開発し,実験と数値計算によりその基本特性を明らかする.さらに開発した発電機が実環境で無線センサを安定的に駆動可能であることを実証する. H29年度は,実際の橋梁の振動加速度を考慮し,加速度0.1G(Gは重力加速度)程度での振動発電機の動作を目指し,次の検討をおこなった.①発電電圧を増加させるため,発電部のコイルの巻き数を700巻(24Ω)から1200巻(44Ω)に増加した.②製造誤差を軽減するため,コイル設置部を強度の高いアルミで作製した.また,コイルに用いる銅線の一部の被膜が剥がれ,コイル軸の電磁鋼板と通電状態となることがあるので,電磁鋼板は絶縁体で被膜した.これらの対策により,0.1G程度の振動加速度でダイオードの閾値電圧程度の0.3Vの電圧を発生できるようになった. 上記のような微小振動で発電する振動発電機を実際に無線センサに用いるため,振動発電機をコッククロフト・ウォルトン回路を介して蓄電回路BQ25504に接続し,その特性を測定した.その結果,0.1Gの入力加速度の場合,1500秒で100μFのコンデンサを3.3Vまで充電できることがわかった.つぎにBQ25504の後段に無線モジュールIM315TXを接続し,振動発電機で発生した電力でIM315TXから,2m離れた距離に設置した受信デバイスIM315RXに信号が送信できるかテストした.その結果,0.1Gの加速度を入力した場合,約25分で充電が完了して通信が開始され,その後1分ごとに通信が行われることがわかった.なお,IM315TXは50mまで通信可能である.このように本プロジェクトで開発した振動発電機により,0.1G程度の微小振動で無線センサを駆動可能な振動発電機が開発できた.
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