ニオイは分子規模の大きさであり、煙は分子が集合した粒子の大きさで形成されている。この事は、ニオイによる火災感知が実用化されれば、既存の熱・煙感知器よりも早い段階で火災を感知できる可能性を示唆している。本研究では、1年目に1室の燃焼拡大に伴う火災感知の状況、2年目に火災室から隣室への燃焼拡大に伴う火災感知の状況を明らかにした。本年度は、75%縮尺の一部二階建ての縮小家屋模型を用いて、その1階室内で火災が発生した際に、隣室及び2階部屋のニオイ変化、ガス濃度変化及び煙・熱感知器の感知状況を実験的に明らかにすることを目的とした。 実験は、1.8m×1.8m×1.8m(4畳半部屋の75%縮尺)の模擬空間を3室(1階部分に2室、2階部分に1室)並べた配置とし、出火室(1階)で発生した煙、ガス及び煙は、垂れ壁下を通して隣室に進展し、隣室中央部に設けた開口部(階段スペースを想定)を通り、2階部分へ流れ拡散する構造とした。発生するニオイを捉えるため、実験は可燃物の種類を変えて3回行った。1回目はタオル(綿100%)、2回目はプラスチック製ゴミ箱、3回目は木材クリブをそれぞれ火源材(可燃物)とした。 ニオイの解析には、ニオイ基準ガスが必要であり、木材(スギ、ヒノキ等)、プラスチック(ポリエチレン、ABS等)の酸化熱分解時に発生するガスをニオイ基準として用いた(昨年までの研究)。その結果、1回目は火源近傍に設置した煙感知器よりも15秒程度早くニオイの変化が見られた。2階天井に設置したニオイ、ガス、煙及び熱感知器は変化が見られなかった。2回目以降の実験では、1回目に行った燃焼時のニオイが付着しており、これらを除去するため実験開始前のニオイをベースに用いると、2階の熱感知器よりもニオイは早い時間で変化した。以上の事から、ニオイは流動拡散距離がのびても、早くに火災感知が可能であると考えられる。
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