研究課題/領域番号 |
15H02983
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
安室 喜弘 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (50335478)
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研究分担者 |
檀 寛成 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (30434822)
尾崎 平 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (40351499)
窪田 諭 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (60527430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 安心の社会技術 / 避難誘導 / 情報伝達 / ハザードマップ / ロケーションシステム |
研究実績の概要 |
本研究では,近年頻発する都市型水害に備え,特に迅速な行動が必要な地下空間での浸水予測状況をその場で具体的に可視化するシステムを開発する.個々の市民が防災,減災に努める上では,明確な災害イメージに基づいた行動判断が重要であるが,シミュレーション等による地図上の浸水予測分布からは災害イメージがつかみ難い.しかも,GPSが機能しない地下空間では,位置推定技術が未成熟で,個々の所在位置に特化した動的な被災予測や避難誘導が難しい.本研究は,大量に蓄積した現地の実写画像を3次元空間に配置したデータベースを構築し,ユーザ端末で撮った写真と照合することでGPSに依存しない位置推定機能を実現し,さらに予測浸水深を3次元画像化して写真に重畳表示することで,1人称視点での予測親水状況を可視化する技術を開発する. これまで, 地下構造物の一角を対象として,SfM(structure from motion)による3次元復元を提案手法に適用させる試みを実施してきたが,出力画像の表現精度に難点が確認され,また対象現場の範囲を広げてスケールを拡張するには計算コストが高く,実現性に問題があることが確認された. そこで,本年度の取り組みとして,実写画像だけでなくレーザスキャナによる3次元データを採り入れる方法を検討し,提案手法の枠組みを生かす形で精度を向上させることに成功した.また,ユーザの位置推定手法についてもやはりユーザ視点での画像に基づいた計算コストの低い手法を新たに開発し,その有効性を確認することができた.したがって,これらの成果を統合し,一連のシステムとして動作させることが今後の取り組みとなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに,SfM(structure from motion)による3次元復元技術を用いて,画像情報のみに基づいた位置推定基盤の確立を目指し,実地検証を踏まえて一定の成果を収めた.しかし,研究を進めていく中で,SfMに依存した方法論では,精度や拡張性に限界があることが明らかとなったため,新たにレーザスキャナによる3次元データを併用した枠組みを検討し,やはり実装を踏まえた検証により,これが精度の向上において奏功することが確認された. さらに,ユーザの携帯端末で撮影した画像情報から,地下街構造物内部でのユーザ位置を推定する手法についても,新たに計算コストの低い方法を提案し,地下街の一角を対象として実データを基にした検証を行い,有効性を確認している.このことにより,対象とする現場のスケールを拡張する際に,画像情報に基づいた提案手法の本来の枠組みの利点を生かしつつ,信頼性の高いシステムを実現する方策が得られたことになる. また,今年度, 浸水予測情報の蓄積手段として,大阪梅田地区を対象とした具体的な地下浸水予測シミューションのデータを,汎用のリレーショナルデータベースを使ってデータベース化することに成功している.このことにより,従来参照できる水害予測情報が浸水分布の時間変化に限られていたが,本研究においては,浸水しない避難経路を検索したり,一定の浸水に至る各地の時間分布を提示するなど,場所や浸水被害そのものをクエリとして情報検索を行える仕組みを実現した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,ここまでに開発したレーザスキャナによるデータを活用する手法に基づいたシステム化の実装を進め,スキャンデータと画像情報を相互に参照する仕組みを自動化するとともに,ユーザの位置情報を推定する技術との統合を図る.この中で,近年汎用的に使われるレーザスキャナの機種によっては,2次利用できる画像データ,3次元点群データの様態が異なることも考慮する必要がある.レーザスキャナの機種に依らず,統一的に扱える方法論を展開し,公開可能なアルゴリズムとして実装する予定である. また,ユーザ端末で画像を撮影し,本システムにアクセスし,位置情報と3次元の浸水情報を参照する方法については,各プロセスで高速化が課題となることが予想されるため,サーバ・クライアント型のシステムを構築する過程で処理コストの分散を検討する予定である. 最終的には,レーザスキャナや画像情報の蓄積機能と,浸水予測情報アクセスするデータベース機能,およびユーザ端末からこれらを参照して現場にてユーザが浸水情報を参照する機能とを両立させながら,システム全体の構成を確定し,ユーザビリティを検証して,本研究課題としての成果をまとめる予定である. これらの具体的な内容は,International Conference on Computing in Civil and Building Engineering(ICCCBE)等の国際会議,土木学会シンポジウムおよび論文誌等にて順次発表・報告する計画である.
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