本研究の目的は、挑戦的萌芽研究でチャレンジした地磁気を利用した津波起源巨礫の年代推定法を発展させて、これまで放射性炭素年代値よりも古く見積もられていた年代を校正することと、我々の手法を広く世界中の巨礫の年代推定に応用することであった。また、津波による砂質堆積物の古流向を磁気異方性から求めることや断層破砕帯の形成時期推定も同時に行うことであった。そこで、非線形統計物理学で用いられている拡張型指数関数を岩石磁気分野に応用することで、これまで理論的に説明がつかなかった残留磁気の緩和過程に関する実験データを統一的に説明することに成功した。さらにこの拡張型指数関数は年代値のズレも説明できることを証明し、国際学術雑誌で公表した。しかし、その年代のズレがどの程度かを決める実験的な手法の開発は課題であった。また、北海道霧多布地域に分布する砂質の津波堆積物の磁気異方性を検討した結果、帯磁率異方性が示す古流向と粒子が持つ残留磁気の異方性とが90度ずれる事例があり、安易に帯磁率異方性から古流向を推定することの危険性を国際学術誌で報告した。さらに、野島断層破砕帯試料を走査型超電導磁気顕微鏡で観察し、残留磁気分布からどこがすべり面かを決定し、さらにそのすべり面が摩擦滑り時に500℃程度まで上昇したことを国際学術雑誌で報告した。 これまでにトンガ王国トンガタプ島沿岸に分布する世界最大級のサンゴ礁起源津波石の調査を実施し、古地磁気年代推定法とウラントリウム年代を併用して、津波年代推定を実施している。この研究の過程で、上記の拡張型指数関数と温度可変型振動型磁力計を利用することで、どの程度年代がずれるのかを定量的に決定する方法を見つけることに成功している。
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