研究課題/領域番号 |
15H02988
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦 寿一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
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研究分担者 |
池原 研 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 首席研究員 (40356423)
辻 健 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60455491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 活断層 / 付加体 / 地震 / タービダイト / 海洋探査 |
研究実績の概要 |
本研究は,1)調査航海における研究,と2)データ解析による研究,3)試料分析による研究,に大きく分けられる.「調査航海」は8月19日~9月15日の期間に学術研究船「白鳳丸」を用いて行った.海域は東海沖から日向沖の前弧海盆から付加プリズム中部斜面で,主に無人探査機を用いた海底下浅部構造探査と精密照準採泥を行った.海底下浅部構造探査は深海曳航式の装置を用いたもので船舶を用いた通常の装置に比べて高解像度の断面を得ることができた.調査は斜面堆積盆を中心に付加プリズム斜面において実施し,堆積盆に記録された変形構造の解明を目的とした.また,堆積層の変形と地震動にともなうタービダイトの堆積時期の特定のため柱状試料を採取した.試料はピストンコアが11地点より,マルチプルコアが20地点より得た.「データ解析」では,海底下浅部構造探査データの処理を行った.取得データに地形補正と揺動補正を行い,縦軸を水深・深度とする断面を作成し堆積構造と変形構造を調べた.特に日向沖から足摺沖海域では,地形図において線状構造の見られる地点を横断する探査を行い,逆断層にともなう堆積層の明瞭な変形を観察することができた.変形は表層の堆積層の厚さに影響しており,変形運動が最近も継続していることを示している.また,日向沖では横ずれに特徴的な変形構造の発達と小規模なダイアピルの存在が明らかとなった.「試料分析」については,ピストンコアおよびマルチプルコアのX線CTスキャン画像撮影を行った.日向沖から得られた試料では,比較的等間隔に挟在されたタービダイトが認められ,今後の微化石を用いた年代決定により乱泥流の発生時期の特定が期待される.なお,同海域の浅部の試料ではタービダイト層の境界が不明瞭で,底生生物による擾乱が示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8月19日~9月15日の調査航海では,台風の多数の発生と観測史上最長の勢力維持のため調査の行なえない日数が多い結果となった.特に当初予定した沖側の探査・試料採取を断念することとなったが,前弧海盆域での優先順位の高い調査はすべて行うことができた.採取試料数は当初予定した数に比べてやや少ないものの,探査機器の良好な運用状況により予定の研究に大きな支障は生じていない.また,平成28年度に予定されている航海において,不足分の探査・試料採取が可能と判断した.分析はX線CTスキャン画像撮影を完了し,年代測定用試料の採取,岩石磁気・古地磁気測定,物性測定を進めており当初予定どおりに計画は進行している.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の調査計画は,1)調査航海, 2)データ解析,3)試料分析,に分けられる.調査航海は,学術研究船「白鳳丸」を用いて10月20日から11月8日に実施する予定である.前年度に引き続いて南海トラフの東海沖から日向沖の前弧海盆と斜面堆積盆を中心とした付加プリズム斜面の探査を行う.実施項目は深海曳航式の海底下浅部構造探査と精密照準採泥である.表層堆積層の変形構造と堆積物の年代から,最近の構造運動と地震に関する情報の取得を目的とする.「データ解析」は,前年度に取得済みの地下構造探査データの再処理を行う.具体的には曳航体の姿勢データを用いてノイズの除去と正確なスケールの復元を試みる.また,平成28年度に取得予定の地下構造データの処理を行う.「試料分析」については,前年度に取得済みのコア試料の有孔虫の拾い出し・年代測定,記載,岩石磁気・古地磁気測定を継続して行う.平成28年度に取得予定の試料は,まずX線CTスキャン画像撮影を行い,記載,物性測定,年代用試料の採取,岩石磁気・古地磁気測定を実施する.海底下浅部構造と堆積物試料の分析結果から,変形および地震履歴に関する情報を所得する.得られた成果を学会・研究会等で適宜公表するとともに学術雑誌に投稿する.
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