研究課題/領域番号 |
15H02994
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐々 浩司 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (50263968)
|
研究分担者 |
本田 理恵 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (80253334)
宮城 弘守 宮崎大学, 工学部, 助教 (90219741)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 竜巻 / レーダー / 突風災害 / 室内実験 / PIV / 画像解析 |
研究実績の概要 |
2016年10月5日と12月22日に高知県内で発生した突風被害について調査を行い、偏波ドップラーレーダーの解析を進めた。このうち10月5日の事例については高知県ではめずらしいミニスーパーセルによる多重渦竜巻であったことを明らかにした。直径2.5kmほどのメソサイクロンのなかに竜巻による直径400mほどの渦がレーダーで捕らえられたほか、竜巻発生時にはメソサイクロン上空の強エコー高度よりもミニスーパーセル前面側の強エコー高度の方が高い前方に傾斜した構造をもつスーパーセルであったことも明らかにした。さらに、レーダー解析については簡易型渦検出アルゴリズムを試行し、一部誤認の可能性を残すものの、リアルタイム運用についての有用性が高いことを確認した。 室内実験については、マルチファン型風洞内で冷気外出流が斜めから貫入する実験を行い、一般場の気流と冷気外出流との流速に竜巻状渦が発生可能な条件があることを確認した。これをもとに、小型冷気外出流模擬装置を用いて正面から対抗する一般流に冷気外出流が貫入する環境を再現して詳細なパラメータ実験を行なった結果、一般場の一様気流流速と冷気外出流の流速が等しいか、わずかに冷気外出流が速い環境下において竜巻状渦が安定して形成されることを明らかにした。このとき、一般場と冷気外出流の間の風速シアーの強さは、竜巻状渦の循環とほぼ比例関係にあったが、渦径はほとんど変化しないことを明らかにした。 10月5日の事例については、目撃者による映像を3点入手し、最大接線速度や竜巻渦径などを計測し、被害幅との対応を確認した。また、機械学習による竜巻パターンの追跡を試み、漏斗雲が明確なものについては捕捉可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーダー解析については、想定していたノンスーパーセルではなくスーパーセルの事例が得られたが、順調に詳細な解析が進みつつあり、まだ誤認は多いものの渦検出アルゴリズムも有効に動作できることが確認できた。 室内実験については竜巻状渦発生条件の確認について着実な進展を見せている。画像解析についても実際の竜巻事例の解析を行なったほか、機械学習による渦追跡の試みが実施され、次年度に向けた発展が期待されている。モデル解析のみ今年度は進めることができなかったが、その他の課題については大きな進展があり、総合的にはおおむね順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
室内実験については、一般場と冷気外出流を組みわせた実験に成功したことにより、今後、冷気外出流がどのような角度で一般場に侵入するかなどのパラメータワークを進めることにした。また、昨年度は行なっていなかったステレオPIVを再開し、竜巻状渦の詳細な3次元構造も明らかにしていく。 レーダー解析については渦検出アルゴリズムの高精度化を進め、過去データを用いた検証を行うとともに、今後発生した事例について詳細な解析を進める。2016年の事例については国際会議ECSSで発表するとともに、論文にまとめる予定である。また、高知県内だけでなく、国内他地域のレーダーによる渦検出を試み、統計的な地域特性と気象庁データベースとの比較を行う。 画像解析については、機械学習とパターン認識の二面から竜巻映像の抽出を試みる。 モデル解析は2014年の事例について、親雲が強化されるリアインフローの強化メカニズムを明らかにする予定である。
|