研究課題/領域番号 |
15H02996
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川方 裕則 立命館大学, 理工学部, 教授 (80346056)
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研究分担者 |
土井 一生 京都大学, 防災研究所, 助教 (00572976)
山田 卓 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70451789)
後藤 浩之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70452323)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地すべり / 弾性波透過 / 現場モニタリング |
研究実績の概要 |
本研究は、地すべりの発生が危惧される斜面において、斜面下を透過する弾性波の波形記録を解析することにより、その斜面の状態をモニターできるようにすることを目指して実施されている。平成28年度は、前年度に敷設された加振器と加速度計アレイによるモニタリングシステムの高度化をおこなった。平成28年度において、ランジュバン型の振動子を加振器として埋設し、1g/V程度の高感度の加速度計にての受信を試みたが、波形解析を実施した結果、加振器からの信号を明瞭に検知することはできず、想定以上に散乱などの影響による波の減衰が強いことが判明した。そのため、加振器の更新やアンプの検討、設置位置の変更、低ノイズレベルでより高感度の加速度計への更新などを実施し、常時埋設には向かないスポット的な加振器において当初目標とした30m測線での受信に成功した。また、定常モニタリング可能な加振器では8m測線での受信に成功した。なお、集録については、停電やネットワークトラブルによる欠測はあるものの、安定稼働が実現されている。 波形解析については、送信信号の工夫(周波数を変調させるスイープ送信など)を踏まえた周波数領域における解析を検討中であり、降雨時などにおける弾性波速度変化を抽出できるようにするべく、プログラムの構築や解析の準備を進めている。また、滋賀県内のテストサイトで得られた波形記録を用いて地震波干渉法解析を実施し、降雨と関連する可能性がある地震波速度変化が検出された。 モデル地盤を用いた弾性波検出に関する取り組みでは、弾性波センサの開発と地下水位変化にともなう弾性波の伝達特性変化の検出を実施した。 平成28年度は、現場の使用年限等の事情もあり、現場モニタリングに比重を置く形になったため、要素試験は平成29年度以降の実施となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
斜面現場における弾性波モニタリングに関し、散乱等による減衰が強いため、10m以上の基線長での透過実績がなかった状態からのスタートであったが、加振器、受信用の加速度計、送信信号について、更新しながら試行錯誤を繰り返した。1か月に1回程度の現場メンテナンスを実施し、計測の維持管理、調整を実施した結果、平成28年度に8m基線での弾性波透過に成功するなど、弾性波モニタリングが実現できる目途がたつにいたった。また、地震波干渉法解析についてもテスタサイトでの記録を用いた解析が進められており、モニタリングサイトの記録で解析を実施できる準備が整いつつある。弾性波モニタリングを優先的に実施したため、要素試験の実施が遅れているが、試験機の導入は完了している。また、弾性波モニタリングの進捗が当初の予定に比して充分であるため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の前半には、10m以上の測線での弾性波の透過を実現させ、加振器からの送信信号に対応する弾性波の解析を進める。降雨に対応する弾性波透過特性の変化の抽出を目指すとともに、地震波干渉法を利用した伝達関数の抽出にも取り組む。また、弾性波モニタリングを先行させたために平成29年度以降の実施に変更された要素試験も実施し、変形に伴う弾性波透過特性の変化に関する知見を得る。模型地盤を利用した弾性波計測も継続して実施し、水と弾性波変化の関係について検討を進める。
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