研究課題
細胞の収縮力を従来よりも効率良く可視化・定量化することができる新しい技術を開発することを目的とする。本年度は、最適な基板材料を選択するために、材料の力学試験や光学特性評価を行った。力学試験では、シリコーン材料の表面に細胞の接着性を付与するための表面改質を行い、そのうえで自作の装置を用いて硬さと破断特性の計測を行った。表面改質とともに、材料の脆性が進行することが定量的に示された。本力学試験の成果は現在国際誌に論文として投稿するための準備を進めている。また、従来の96ウェルプレート(創薬用にサイズが国際標準化された、96個のウェル(穴)状細胞培養部を有するもの)の細胞培養部分に同基盤を設置するだけでは、所望の効果(細胞およびその収縮力の可視化)を得ることができないことをまず確認した。そこで、この表面改質を行った基板材料を、独自の96ウェルプレートに組み込むことができる機械装置を設計および製作した。この独自96ウェルプレートの側壁部分の形状は様々なものを製図して3Dプリンターにて3次元加工製作を行った。同プレートの底面部に細胞収縮力可視化用基板を取り付けるために、12個の鉛直方向内に固定された細棒の上に表面改質済み基板を設置し、機械スライダーの操作に応じて上記プレートの側壁部の下側縁へと移動・固定できる機構を作製した。この12個の細棒を、別の機械スライダーの操作により、個々のウェル間隔分だけ8回ずつずらし、合計96(=12 x 8)個の基板を側壁部へと取り付けられるようにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の主たる研究目的である独自96ウェルプレートの製作を終えることができたため。また、その製作に先だって実施した基板材料の力学特性の計測結果を論文としてまとめており、近日中に投稿できる状況にあるため。
今後は実際に個々のウェルで細胞を培養して収縮力の可視化性能を確認することが主たる課題である。併せて、共同研究者の協力を得ながら、様々な細胞生物学的問題に対して同技術を適用して、本細胞収縮力可視化技術の有効性を実証し、細胞生物学会や分子生物学会等で積極的に成果発表を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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http://mbl.web.nitech.ac.jp