研究課題
本研究では分子生物学的手法を駆使することによりタンパク質ベースのバイオナノカプセルを作製・機能化し、医用材料としての応用を目指している。本年度は特定の疾患に応答するナノカプセル型の分子設計と発現を行った。細胞は極めて精緻なシグナル伝達によって制御されているが、多くの疾病ではこのネットワークが破綻している。例えば癌組織周辺においては、MMPの異常亢進が確認されており、癌細胞の浸潤・転移と大きく関係している。本研究では最初の分子標的として、疾患関連プロテアーゼに応答するナノカプセルの開発を目指した。これを可能にするには、プロテアーゼがスイッチとなり、その物性を大きく変化させる機構が必要である。そこで本研究では、Hsp16.5が形成する球状ナノ構造の維持にいくつかの二次構造が必要なことに着目し、この領域にプロテアーゼの基質配列を導入した。これによって、プロテアーゼの存在下においてはその配列が特異的に切断され、結果としてカプセル構造が崩壊することが期待される。この結果、カプセルを構成する24個のサブユニットのそれぞれに、最大で3個所の基質配列を入れることに成功した。基質配列を組み込んだサブユニットは、GPCや動的光散乱測定の結果、野生型と同様なカプセル構造の形成が可能であり、なおかつプロテアーゼによって切断されることが確認された。また本ナノカプセルは血マウス血清中では少なくとも24時間、安定にカプセル構造を維持した。このように特定のプロテアーゼによって消化されるナノカプセルはDDSや分子イメージングの基材として極めて有効である。
2: おおむね順調に進展している
ナノカプセルを抗原とする抗体の作成に時間を要したが、計画書にしたがって順調に研究が進展してる。
最終年である本年度は、当初の計画通り、それぞれに機能化したサブユニットを複合化し、より複雑で高機能なナノカプセルの作成を目指す。
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Gastroenterology
巻: 印刷中 ページ: -
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Scientific Reports
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