研究課題
骨格筋による精緻な運動調節や姿勢維持には、筋に分布する感覚神経(筋感覚神経)が筋の伸縮による機械的ストレス(メカニカルストレス)を正確に感知し、筋自身の動きへとフィードバックする巧妙な制御システムが重要である。また、過剰な運動や筋損傷は、筋感覚神経の機能亢進を介して痛みを生じ、危機回避という形で筋機能の回復を支えている。しかし、筋感覚神経が筋の伸縮に伴うメカニカルストレスを感知し、筋収縮特性の違いを検出するしくみは不明である。本研究では、筋固有感覚を担う筋紡錘・腱器官などの伸張受容器、および筋痛覚受容器のメカニカルストレス感知機構の解明を核として、メカニカル刺激を介した神経-筋の相互作用の分子的基盤を解明する。これにより、運動器障害(ロコモティブシンドローム)や、筋の慢性痛を緩和する新しい治療法の開発につながる基盤的知識の確立を目指す。本年度は、①,骨格筋の伸縮や運動様式、あるいは痛み刺激を感知する筋感覚神経を逆行性に標識し、②,これらの神経をターゲットとして培養下で機械刺激に対する応答を調べ、筋メカニカルストレス受容の分子基盤に関する情報を得た。また ③,メカノセンサー分子として知られるTRPV2の感覚神経・筋・血管特異的欠損マウスを用いて、細胞および個体レベルで筋感覚神経の機械感受性を解析し、TRPV2の寄与を明らかにすることを試みた。これらの結果から、TRPV2の痛覚および触覚に関する関与の違いを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、年度内に感覚神経特異的なメカノセンサーのノックアウトマウスの実験結果を得ることができ、現在発表準備中である。また、得られた研究成果から派生して、新たな共同研究を複数展開することができているため。
当初の実験計画通り、最終年度の計画を実施する。また、これまでの成果に基づいて展開している研究項目について、共同研究者と連絡を密に行いながらこれを実施する。さらに最終年度は、実験結果のアウトプットを重視し、学術雑誌への論文投稿および、日本語での成果の公表に努める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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