研究課題/領域番号 |
15H03014
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 信人 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80447044)
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研究分担者 |
グン 剣萍 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (20250417)
津田 真寿美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30431307)
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (40451439)
仙葉 愼吾 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40466496)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体材料 / 再生医学 / 軟骨再生 |
研究実績の概要 |
骨伝導能と軟骨再生能を併せ持つ多機能ハイドロキシアパタイト複合化ゲル(HAp-DNゲル)を作成し、人工軟骨用および軟骨再生用の円柱状インプラントとして、DNゲルの表層にのみ厚さ500μmのHApを安定的に析出させる技術を開発した。作成したHAp-DNゲルインプラントの機械的特性を、万能力学試験器を用いた圧縮試験で、また示差熱・熱重量同時測定(TG-DTA)により水分含量および基準物質の分析を行った。従来のDNゲルとほぼ同等の材料特性であり、HApの複合化によってもDNゲルの特性は失われていないことが明らかとなった。さらにこのHAp-DNゲルを家兎膝関節に埋植し生体内における骨接着能の評価を行った。家兎52羽を用い、両膝に4.3mmの骨軟骨欠損を作成し、無作為にDNゲルあるいはHAp-DNゲルインプラントを埋植した。DNゲルは術後12週まで骨接着を認めなかったが、HAp-DNゲルは組織学的に術後2週より類骨など新生骨による再生骨形成が始まり4週でゲルと骨が固着していることが明らかとなった。また力学試験によりその固着強度は、術後2週でDNゲルより有意に高値であり(p=0.0018)、術後4週ではゲル強度を超える接着が得られていた(4週:37.54 N、12週:42.15 N)。マイクロCT評価では接着面積は4週で全体の約80%、12週で90%以上となっていた。HAp-DNゲルの関節面は従来のDNゲルであり、これまでのIn vivo関節軟骨再生実験系における深さ2mmに設定すると術後4週で同様の軟骨再生能があることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画による骨接着型多機能DNゲルの開発と動物における移植法の確立、またその有効性と限界を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の成果により、これまで不可能とされてきたハイドロゲルの骨固着を可能とする技術を確立した。DNゲルの臨床用途の可能性を発展させるために、より安全な基材である軟骨基質高分子を用いたより強固なDNゲルの創製を目指す。軟骨基質高分子複合化DNゲルの作成技術は既に確立しており、これを生体に応用する。軟骨基質高分子複合化DNゲルの生体内挙動を明らかにするために、皮下および筋肉内埋植試験を行い、ISO 10993-6を含む「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について(薬食機発0301第20号 平成24年3月1日)」に基づいて、組織学的および力学的に評価する。動物実験では、日本白色家兎を用い、皮下に従来のPAMPS/PDMAAm DNゲルおよびコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸を複合化したDNゲルを埋植し、術後6週および12週で周囲組織ごと摘出し、万能力学試験器による圧縮試験、TG-DTAにより水分含量および基準物質の分析、組織学的に基礎的安全性評価を行う。さらにこれらのDNゲルが軟骨再生を誘導するメカニズムを分化促進と変性制御の側面から分析することにより解明する。軟骨細胞分化モデル細胞であるマウスATDC5細胞およびマウス間葉系幹細胞をこれらDNゲル上で培養し、軟骨分化マーカーに加え、オートファジーマーカーの発現変動を解析する。これらの解析により軟骨分化過程の軟骨基質高分子とオートファジーの役割を明らかにする。
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備考 |
本研究発表が米国整形外科基礎学会 (ORS) New Investigator Recognition Awards (NIRA) を受賞した。
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