研究課題
本研究は経強膜マルチドラッグデリバリーデバイス(経強膜DDS)の開発においてこれまで明らかとなった課題を解決し早期実用化を目指す研究である。H27年度はデバイス形状の規格化、ウサギ眼におけるデバイス埋植毒性、ウサギ眼における薬物眼内動態、Fibrosis抑制検討を行った。MRIデータから造形したヒト眼球モデルを用いて眼球上に密着するヒト用デバイス形状をCAD/CAMで作成した。徐放性のバラつきを低減するために、原料ロット管理、UV照射強度・温度・UV波長の調整等を実施し製造法を規格化した。また鋳型精度のバラつきを改善するために、マスター鋳型から大量のコピーを作成する方法を確立した。同様にしてウサギ用デバイス調製法も規格化した。ウサギ眼に対するデバイス埋植毒性を検討した結果、プラセボデバイスおよび未処置群と比較して52週間の埋植中に網膜電図の振幅値に有意差を認めず網膜機能に影響がないことがわかった。また、光干渉断層計による網膜層厚みの評価から組織学的な毒性を認めなかった。ウサギ眼に埋植後、眼球を摘出して網膜と脈絡膜、および血漿中の薬物濃度を定量した結果、24週間にわたって点眼と同程度の薬物移行を認めた。点眼とは異なり前眼部や硝子体には薬物を認めず、また血漿中の薬物濃度は点眼よりも低く、後眼部局所に薬物が移行していることが示唆された。Fibrosis抑制検討として免疫抑制剤シクロスポリンA(CYA)のDDS化を検討した。デバイス埋植直後の異物反応を抑制する目的で1週間程度のCYA徐放を目標とする生分解型皮下インジェクタブルDDSを作成した。Fibrosis抑制効果については次年度以降検討する。
2: おおむね順調に進展している
相乗効果を示す薬剤組合せのスクリーニングについては有効な薬剤の探索に時間がかかっているが、その他の項目については概ね順調に推移しており、眼内移行性については1年前倒しで結果を得ている。
Fibrosis抑制およびデバイス強膜上固定法については、新たに開発中のシクロスポリンA徐放システムを中心に進める。動物モデルを用いた網膜保護エビデンスについては、網膜変性ウサギに対する埋植を開始し、網膜電図や光干渉断層計で網膜保護効果を検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
Journal of Biomedical Materials Research Part B: Applied Biomaterials
巻: in press ページ: in press
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